本作品は2022年作です。

●霊界のお仕事人(アフター・ライフ・ワーカー) シリーズ●

<第八話 麻薬戦争>

 ある日、勇樹達がオフィスで仕事をしているとモグロが上機嫌な様子である。
モグロは3人に声を掛けた。

「おい、感謝状が贈られてきたぞ。
 シンリ、お前この間、殺人犯を幽霊の姿になって脅して自首させただろ?
 警察チームが感謝状を贈ってくれたぞ。
 霊界のあちこちでも評判になっているらしい。
 あんなにうまく幽霊に化けることはなかなかできないからね。
 シンリお前凄いな」
「モグロさん、ありがとうございます。長年の修行の成果です。
 最近は鎧兜を着た武者の霊に化ける術を磨いてます。
 武者の霊は最高に怖いですから。
 この間、試しに、心霊スポット巡りを繰り返している
 少年達に見せたところ、震え上がっていました。
 もう二度と心霊スポット巡りなんてしないようにさせました。
 警備チームも喜んでくれました」

勇樹もこの話に興味をそそられたようである。

「シンリさん、そんなことができるんだ。凄いなあ。
 心霊スポットで人を脅す仕事なんて、そんな面白い仕事ありなんですね」
「若い人は心霊スポットで肝試しをしたがるんだが、それは危険なことなんだ。
 そんな所にはろくでもない冷やかしの霊が集まっている。
 いいことなんて何もない。もっと怖いのは、
 霊ではなくて、そんな場所に行くこと自体なんだ。とても危険なんだ。
 廃墟や山奥など、事故に遭いやすい場所だし、不良など悪い人間がたむろしてたりする。
 霊よりも人間の方がずっと怖いんだ。
 だから、警備チームはあえて怖い想いをさせて二度と心霊スポット巡りなんか
 させないようにする戦術を取っているんだ。私も脅す役を頼まれたわけさ」
「へえ、そういうものだったのか? お化けの術が役に立つわけね。
 シンリさんの術といい、お局さんの未来を変える術といい、役にたってうらやましい。
 俺には人の意識を操る術があるんだけど使っちゃいけないんだよな」

それを聞いてモグロが釘を刺した。

「勇樹、恨みを晴らすことに、それを使ってはいけないぞ。
 だがな、緊急事態、例えば人命救助とか国を守るとかだな。
 そういう時は許されるんだ。私は許可してやるぞ。
 いつかきっと役立つ時がくるだろう。それを心得ておけよ」
「国を守る? 俺にもそんな任務が与えられるのかな?」
「まあ、そんな危機なんて無いに越したことは無い。
 もしもの場合の話だ。
 とにかく、ウチのチームのメンバーはみんな特殊な力がある。
 霊界では貴重な戦力だ。みんなを掘り起こした
 私の目に狂いはなかった。
 みんな現世では役立たずの人間だったがな。
 私はゴミ捨て場の中から宝物を発掘する天才なんだよ」
「モグロさん、やめてよ、褒めてくれてるのか、けなしてるんだか
 わかんないよ」

そんなある日、警備チームから緊急要請がシンリに来たのである。
シンリに緊張が走った。慌てたような顔をして声を上げた。

「モグロさん、今山奥の廃墟にアベックが肝試しに行ってしまった。
 悪いことにその廃墟には不良達がたむろしている。最悪の連中だ。
 まずい、アベックが狙われる。今大勢でアベックを守るために結集している。
 アベックは二人とも鈍感で霊達が警告しても全く気付いてくれないらしい。
 このままでは危ない。私も出動を要請されたんだ。
 モグロさん許可してください。勇樹、お前も協力しろ、
 最悪の場合お前の術を使ってでもアベックを守るんだ」

山奥の廃墟、そこは有名な心霊スポットである。
そこに夜中、アベックが車でやって来てしまった。
二人は廃墟に恐る恐る侵入してしまったのである。
その様子がモニタに映し出された。

「私、一度霊を見てみたかったの。
 ここは凄いスポットだって評判なのよ」
「うん、そうだね。気味が悪い場所だね。
 カメラで撮影しておいてくれ。きっと何か写るはずだよ」

すると廃墟の方からざわざわと音がしてきた。誰かの歩く音、声である。

「ああ、霊が現れたんだわ!」

と驚いてると目の前に現れたのは霊ではなく、不良達である。

「やあ、アベックさん、こんなところでデートかよ?
 かわいい姉ちゃんじゃんか。
 俺たちと今夜つきあってくれよ」

すぐに大勢の不良達がアベックを囲ってしまった。
いかにもワルの男達である。
二人は絶体絶命のピンチに陥ってしまった。

「しまった。こんなところに来なければよかった・・
 どうしよう((((;゚Д゚))))」

アベックは恐怖に震えている。
そこにシンリがやってきて術をかけた!
突然、二人の周りに煙が立ち登った!

「うわ、何だ。こりゃ!!」

と不良達が顔を伏せた。
再びアベックに目を向けるとそこには誰もいない。

「あれ、あいつらどこに消えた。
 近くに隠れてるに違いない。探せ!!
 いねえぞ、どこに行った。
 あいつら忍者だったのか?」

不良達が周囲を探しまわったがアベックは見つからない。
一方アベックは何が起きたのかわからないという感じで立ちつくている。
そこへ乞食みたいな格好をしたシンリが出現して二人にささやいた。

「お二人さん、今あなた達は透明になっている。
 不良達には見えていない。
 今の内にここから逃げなさい」
「あ、あなたは・・」
「いいから逃げなさい」

アベックは不良達の目の前に立ってみたが、確かに見えないようである。
そこで男は試しに木の棒を手にして、不良の一人の頭を目掛けて
「この不良ども、死にやがれ!」と力を込めで殴った。

「ギャー!」と不良は声をあげて倒れた。
それを聞いて仲間が集まってきた
「一体どうした」
「木の棒が浮き上がって俺を叩いた」
「そんな馬鹿な!」
「おい、なんかやばいよ、ここは」
「そうだな、もうここから逃げようぜ」

不良達は頭をケガした仲間を抱えてそそくさと消えてしまった。
二人はそのすきに廃墟から抜け出して逃げることができた。

「ああ、怖かった。殺されると思った。
 僕たちを助けてくれたあの人は誰なんだろう?」
「長髪でヒゲを伸ばしてたわ。そしてみすぼらしい格好してたわ
 とてもやさしい人、きっとキリストさんだわ。
 でも、どうして・・・私達クリスチャンじゃないのに」
「僕の祖父が長崎に住んでたんだ。クリスチャンだったと聞いてるよ。
 きっとその縁でキリストさんが助けてくれたんだよ」

後日、シンリのこの透明の術は霊界中の評判になったようである。
霊界の霊が現世の人間に見えるように姿を現わしたり、奇跡みたいな現象を
起こすことは極めて難しいことで、これができる霊は尊敬されたりする。
ましてや透明の術は、今の時代で成功させた霊などいないのでは?
と思われるほど高度な技である。

シンリやモグロに賞賛のコメントが次々と送られてきた。
中にはうちのチームに来てくれと言うオファーもある。
これを見てモグロは少々不機嫌になった。

「うちの3人は誰にも渡さないからな」

と口ずさむのであった。

そんな日々を送っていたのだが、日本では麻薬の摘発が急激に増加しており、
社会問題化しつつあるのだった。
どうやらメキシコの麻薬マフィアが日本をターゲットにしているらしい。
近年、アメリカの規制が厳しくなったため、日本に販路を見出したようである。
マフィアは日本に着々と侵入してきており、アジトも作り始めた。

そして遂に裏社会での、在来勢力との争いまで勃発してしまった。
ある日、日本のやくざの事務所がマフィアに襲われて組員が大勢殺害されてしまったのである。
映画のように銃器を用いた大量殺りくが起きてしまったのである。
日本ではほとんど例がない残虐な抗争事件である。
警察の調べではメキシコのマフィアの仕業であるとのことである。
遂に日本が海外の麻薬組織の餌食にされる時が来たと日本中に恐怖が走った。

すぐに公安でマフィア対策部隊が結成され麻薬撲滅運動が開始された。
霊界でも、これに呼応して有志の部隊がたくさん結集してきて物々しい雰囲気である。

勇樹達にも、あちこちから麻薬戦争の話題が流れてきている。

「俺たちにも何か手伝うことがあるかな」

と思っているとモニタに依頼が流れてきた。
シンリには警察チームから協力依頼が来ている。
勇樹には検察チームから協力依頼が来たのである。
どうやら、訴訟の時に力を貸してほしいということらしい。
お局にも依頼が来たが「国家安全保障チーム」というところから来たらしい。

モグロはそれを目にして驚いたような顔をしている。

「お局さん、国家安全保障チーム から来てるじゃないか?
 私も良く知らない先鋭部隊だよ。国の安全保障を担当するチームだ。
 我々よりももっと上の階層の世界に居る高潔な組織だよ。凄いじゃないか?」
「あら、きっと国の未来の運勢を調整する使命を依頼されたのね。
 私の術が役立つ時がきたわね」

勇樹もびっくりしている。

「国家安全保障チーム、そんなのがあるんだ。自衛隊みたいな組織かな?
 かっこいいな。俺もそっちに参加したいな。どんな霊達がメンバーなのか?
 見てみたいよ。きっとエリート達なんだろうな」

するとシンリが回答した。

「勇樹も検察チームに声を掛けてもらったんだから喜べよ。
 裁判で悪党どもを有罪にする仕事だろう。
 勇樹の実力が認められたんだよ。凄い事だよ。
 私は術を使って悪党どもを脅す役割なんだろうな。
 外国人には鎧兜の武者は効くだろうね。びびらせてやるよ」
「シンリ、お前の透明の術が目当てだろう」
「う、うん、でもうまくいかない時もあるんだよな」

3人とも久々に大仕事だと緊張をしている。

現世では警察がマフィアの捜査を開始したのだが、敵も一筋縄の相手ではない。
マフィアは水面下でじわじわと日本に浸透しつつあり、なかなかしっぽを見せない。

そんなある日、公安警察の部署の一人、山本という男がマフィアのターゲットに
されてしまった。山本は部署の事務員であるが、帰宅途中にマフィアの男達に
捕まりアジトに連れていかれて脅迫されてしまった。

「おい、メンバーの名簿、捜査情報をこちらに渡せ、
 もし、言うことを聞かなかったらお前の家族を全員殺す。
 お前の可愛い娘は海外に売り飛ばす。俺たちは日本のやくざとは違う。
 口だけの脅しじゃない。本当にやる。裏切ったらすぐにやる」

そう言って脅してきたのである。
山本は悩み抜いたが家族を人質にされてしまったのでいう事をきくしかない。
悩みに悩んだが、言われるがままに警察の情報を提供してしまった。

ある日、刑事達3人が一般人を装ってマフィアのアジトに訪問したとき、
マフィア達は待ってましたとばかりに3人を銃で脅して中に入れた。
山本からの情報で警察が覆面で捜査に来ることを事前に知っていたからである。

「お前らが来ることは分かっていた。お前らが警察だということも。
 全部お見通しなんだよ。なめんなよ。
 俺たちの邪魔をする奴がどんな目に遭うか? 見せしめにしてやるぜ!」

3人の警察官はアジトの奥の部屋に監禁されてしまった。
大変な事態である。霊界でも大騒ぎである。

「おい、警察官が捕まってしまったぞ。何とかしろ!
 裏切り者がいる。そいつは山本というやつだ」
「とんでもないやつだ」
「しかし、家族を人質に脅されたんだ」
「酷い手を使うやつらだ。極悪非道とはこのことだ。
 外国のマフィアは本当にやることがえげつない」

と警察チームが右往左往している。そんな時、シンリに応援要請が来た。

「警察がこれから救出作戦を開始するだろう。
 我々が総出でサポートする。そこでシンリさんにお願いがある。
 シンリさんは突撃した時に人質にされた警察官を透明にして守って欲しいんだ」

と言う要請である。シンリにも緊張が走った。

「はい、わかりました」

と答えたのだが、シンリには不安を感じている。

「成功するかな。透明の術は難しいんだよ(-_-;)」

アジトでは、監禁されている3人の警察官が
「いつ殺されるかわからない」
と恐怖に震えている。
大声が出せないように口をヒモで塞がれているので小声しか出せない。

「俺たちどうなるんだ」
「リンチされて殺されるだろう。見せしめだ」
「救出が来るかな」
「来る、大丈夫、ここに居ることは仲間が知っている。
 救出が必ずくる。だが、その時が正念場だ。
 奴らは俺たちを人質にして立てこもるかもしれない」
「やっかいなことになりそうだな」
「覚悟を決めるしかない。もう殉職する覚悟を決めろ。
 死ぬ覚悟がないとこの危機を乗り越えられないぞ」
「わかった。腹をくくる。
 死にたくはないが、もう仕方ない。
 かっこよく殉職するつもりだ」

翌日になって3人が大人しく待っていると、突然アジトが騒がしくなった。
マフィア達が騒いでいる。何かが起きたらしい。
警察官は「救出が来たに違いない」と期待を膨らませた。

すると突然銃撃の音が聞こえだした。
ドドドドドと機関銃のような音である。

「仲間が助けに来てくれたのか?」
「いや、まて、警察がいきなり銃撃するわけない」
「確かに、この音は警察の音じゃない」
「ということは・・マフィア同志の抗争?」
「たぶんそうだ。
 敵対するマフィアの殺し屋が襲撃しにきたんだ。
 見つかったら俺たちも殺される」
「やばい」

しばらく、機関銃のような音と悲鳴がアジトの隅々にまで響きわたった。
何者かが豪快に攻撃をしているように聞こえる。
やがて銃声は収まった。

その後、各部屋を調べ始めた。
襲撃者が、残党がいないか?を調べているように聞こえる。
一つ一つ、部屋の扉が開けられていく。
その音が3人が監禁されている部屋に近づいてくる。

「やばい・・殺される」

警察官は恐怖に震えている。
この時、アジトに集結した霊達も必死の対応をしていた。

「おい、警察官を守れ!
 この抗争から3人を守れ、何とかしろ!
 シンリさん、早く3人を透明の術で見えなくしてください」
「わかりました。術をかけます」

シンリが必死に3人の警察官に透明の術を掛けた・・・・が
うまくいかない。何度術を掛けても透明にはならない。

「まずい、うまくいかない。どうしてだろう」

そうこうしてる内にとうとう、3人が監禁されている部屋の扉が開けられてしまった。
「バタン」と扉が開けられてしまった。

「もうダメだ。俺達は殺される」

と3人は死を覚悟した。
すると黒づくめの男達がマシンガンを持って入ってきて銃を向けた。
すぐに、ヒモで縛られている3人を発見した。

警察官は必死に訴えた。

「俺たちはマフィアじゃない。捕らえられただけだ。
 命は助けてくれ!」

と必死に英語で訴えたのである。
すると男達はマスクを外して素顔を見せた。その顔は日本人である。
机の上に手帳類が置いてあるのを見つけて、眺めた。
それが警察手帳であることに気づいて、笑いながら話しかけた。

「なんだ、あんたら、サツか?
 捕まってたのか? みっともねえな」
「あんた達は日本人か? 一体誰だ?」
「俺たちは、あんたらサツの敵だよ。やくざだよ。
 仲間の弔い合戦をしにここに来たのさ。
 仇はうってやったぜ。みんなお陀仏にしてやった。
 外国のマフィアなんぞに好きにはさせねえよ
 あんたらには恨みはねえよ。
 さあ、あんたらは、こっそりここから帰りなよ
 マフィアに捕まってたなんてみっともねえだろ」

やくざ達は3人の紐を説いて解放した。

「この恩は忘れるなよ。
 俺たちがやったなんて口にするんじゃねえぞ」
「わかった。約束する。何も言わない」

その後、この殺戮事件はマフィア同志の仲間割れによる事件ということで処理された。
麻薬を売りに来た外国人のために人を割いて捜査するなんて税金の無駄という
世論があったため、警察もたいした捜査をすることなく仲間割れの喧嘩ということで処理した。

マフィアの進出拠点があっけなく壊滅したわけであるが、これで済むのだろうか?
再び進出してくるのではないだろうか?と世間には不安が残っていた。
勇樹達もやはり不安である。しかし、お局だけは楽観的である。

勇樹:「マフィアがこれから仕返しに来るんじゃないのか?」
局:「大丈夫、本国のマフィアの幹部達もすぐに始末されるよ。
   ほとんど死刑になる。彼らはもうすぐ壊滅する」
勇樹:「なんでそんなことががわかるの?」
局:「これからが国家安全保障チームの出番らしいよ。
   国を守るために本国に乗り込んで壊滅作戦を実行するらしいわ。
   彼らは必ず任務を成功させるわ。国を守る精鋭部隊だからね。
   実は、私も協力しているのよ。
   私の任務は、未来の運勢を変える仕事よ。私の得意技だからね。
   マフィアが壊滅するように未来の予定図を変更しておいたわ」
勇樹:「お局さん、未来を変えるなんてホントにできるの?」
局:「未来ってね。予定表が組まれているの。でも絶えず流動的に変化しているのよ。
   それを変更することができるのは霊界のかなり上層世界の神仏みたいな存在
   もしくは特殊な運勢調整の術を持った使い手だけね。
   私はそれができる使い手の一人なのよ。
   実はねえ、運命は幸運・不運のバランスで調整させれているの。しかも
   そこには法律やルールみたいな複雑な規定が絡んでいて、それを守りながら、
   バランス良く調整することが重要なの。
   それをしないで未来をいじったりするとすぐにペナルティを課せられて権限を剥奪
   されてしまうのよ。現世で言えば「アクセス規制」にされるようなものね。
   今まで大勢の占い師・祈祷師がこれに挑戦して規制されてしまったわ。
   でも、私は規制されたことなんてないわよ」
勇樹:「お局さん、凄いんだね。マフィアの未来の運勢を変えたの?」
局:「そうよ。彼らの未来の幸運や運気を全部、恵まれない人達に移動して、
   他の人達の災い・苦しみを彼らに付け替えたのよ。
   だから、彼らはこれから破滅する運命になるのよ」
勇樹:「ええ、そんなことができるの?
    じゃあ、誰かを不幸にすることもできるわけ?呪いに使えるじゃん。
    なんか怖いなあ」
局:「個人的な恨みや利益のためにそんなことをする人間はすぐに規制されてしまうわ。
   そんな奴にこの術を使いこなす資格はないわね。
   未来の予定図にアクセスするだけでも高度な技術が要るのに加えて、
   倫理観や正負のバランス計算まで必要なの。馬鹿には無理な仕事よ。
   私みたいに世の中に役立つことだけに使って上手にポイント稼ぎをするドライさが重要。
   私情をはさんではダメ。それができる使い手だけが未来を変えられるの。
   ところで、シンリにも国家安全チームから声がかかると思うよ。
   マフィア撲滅の時の最後の仕上げをする必要があるみたい。
   二度と日本を狙ってこないように”日本は恐ろしい”という伝説を作る必要があるみたい。
   シンリ、あんたは、その為に呼ばれると思うよ。
   透明の術は残念ながら失敗したみたいだけど、まだお化けの術があるからね。
   それで挽回しなよ」
シンリ:「ああ、それを言われると痛い。
     肝心の時に失敗してしまった。ダメだな。俺は。
     もっと技を磨くように努力するよ」
局:「シンリ、奴らの目の前でお化けになって脅せるだろ?
   日本的なお化けがいいな。そうだな鎧兜を着た武者とか言ってたな。
   それがいい。それで脅したら、きっと日本を恐れてもう狙わなくなるだろうね。
   国家安全の人に提案しておくよ」
シンリ:「わかった。要請が来たらやるよ。今度こそ成功させて、名誉挽回したい」
勇樹:「いいなあ、俺もその部隊に入隊したいよ」
局:「あんたは人の意識を操る仕事があるだろ、これから依頼が来るよ。
   裁判で存分に活躍させてもらえるよ」

モグロがそれに気づいて口をはさんだ。

「おい、お前ら、他所のチームの手伝いするのはいいが、
 勝手に移籍するなよ。
 お前らはみんなうちのチームのエースなんだからな」
「メンバー全員がエースだなんて、それはエースとは言わないよ」
「そうかもしれないな。みんな大事な戦力なんだ。
 ところで、勇樹、お前に頼みたいことがあるんだ。
 今回の件でマフィアに脅された男がいただろ?
 山本という人だ。この人は仲間を売ってしまったことを後悔している。
 ひどく傷ついて寝込んでしまっている。毎日自分を責めているんだ。
 ”もう立ち直れない”って苦しんでいるんだ。
 モニタで見てみろ。ひどく苦しんでいる。
 可哀そうだから慰めてやってくれ。
 家族を人質にされたら、誰だってそうするしかないんだ。
 こんな極悪非道な脅しをするマフィアの方が悪いんだ。
 ”あんたは悪くない。自分をこれ以上責めるな”と慰めてやってくれ」
「わかりました。自分を責めるなって説得してあげますよ。
 痴漢冤罪の後悔地獄で苦しんだ俺だから、彼の気持ちはわかります。
 ”過去の過ちに負けるな”って励ましてやりますよ」

その後、日本を狙ったマフィア組織は、メキシコ政府・軍そしてアメリカ軍の合同作戦に
よってあれよあれよという間に壊滅させられた。
組織のメンバーの多くが軍に殺害されるか、逮捕され、幹部のほとんどが死刑になった。

この作戦の時、軍の先頭に鎧兜を身に着けた武者が居たという証言が多数あり、
目撃者達を震え上がらせた。この話は伝説となってすぐさま各国に広がったのである。

また、裁判で逮捕者が素直に罪を認めたため、幹部がほとんど死刑判決になったのである。
このことは現地で大きな話題になった。

あれよあれよと言う間に崩れるようにマフィアが壊滅してしまったこと、
日本の武者の姿の目撃談、そして裁判で多くの者が何かに操られるように罪を告白したことから、
中南米の麻薬組織の間である都市伝説がささやかれるようになった。

「神秘の国、日本に手を出すと恐ろしい祟りがある。
 サムライの霊が襲い掛かってきて復讐されてしまう。
 決して日本には手を出してはいけない、手をだしたら皆殺しにされる」

以降、麻薬組織は日本には決して手を出さなくなったのである。

つづく



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