本作品は2022年作です。

●霊界のお仕事人(アフター・ライフ・ワーカー) シリーズ●

<第七話 大予言>

 今日も勇樹はオフィスでくつろいでいた。

「ああ、ここに来てからずっと働きっぱなしだな。仕事は好きだからいいけど、
 たまにはバカンスでも行きたいね。
 現世に居た時も仕事ばっかりで長期休暇なんて取れなかったな。
 ブラック企業だったからね。
 一度くらい、海外旅行に行きたかったなあ」

などとぼやいてると聞き耳を立てていたモグロがにやにやして近づいてきた。

「こちらの世界ではノルマなんてものはない。
 いつでもバカンスを楽しんでいいんだよ。
 実はなあ、丁度良い仕事があるんだ。
 お前とシンリでフランスに行ってくれないか?」
「え? フランス?
 どういうことですか?」
「今、応援要請が流れているんだ。
 現世のある人がそろそろこちらに来るらしいんだ。
 だが、やり残したことがあるようで、死んでも死にきれないという感じらしいんだ。
 フランスに行かないと解決しないことらしいんだ。
 その人がこっちに来たらフランスに連れていってあげて欲しいんだ」
「へえ、そりゃ、面白い仕事ですね」
「誰も手を挙げてくれないらしいんだ。
 ちょっと一癖ある人だからなんだ。
 でも我々にピッタリの仕事だよ」
「また変な人(-_-;)
 どんな人なんです」
「その人はなあ、予言研究家の男なんだ。
 一生を予言の研究に費やした人なんだ。
 その人はフランスの聖女が決して明かさなかった聖母マリアの予言に
 執着してるんだ。晩年はそれに心血を注いでいたらしい。
 もうその聖女はこちらに来ていて、予言は封印されてしまったんだ。
 いろいろ研究したが結局、謎は解けなかったんだ。それが悔いになってるらしい。
 だから、その人を、霊界に居る聖女の所まで連れていって直接聞き出してほしいんだ。
 ついでにフランス旅行を楽しめばいいよ」
「予言に人生を費やした男?
 また、そんなおかしな人に目をつけましたね。
 モグロさん、ほんと変人が好きですね」
「その人はな、金儲けで予言を研究してたわけではないんだ。
 本当に予言を信じていて、世界の危機を救おうと考えていた
 純粋な予言研究家なんだ。世界の未来を本気で心配している人なんだ。
 防災の啓蒙活動までしていた人だ」
「オカルト研究家でしょ?
 過激な予言を本にして世間を騒がせて本を売ってるおかしな人達でしょ?」
「この人は本なんて出してないよ。無料でブログを発信してただけだ。
 同じ予言研究家でも恐怖を煽る人達とは全然違うタイプだよ。
 フランス語も勉強して翻訳の達人でもある。努力家だよ」
「なるほど、モグロさんが好む愚直なタイプですね」
「まあ、世間では相手にされない変人かもしれないが、
 こういう真面目な努力家はこちらに来てから、戦力となる人材なんだ」
「我々もお局さんもそうだったってことね?
 ちょっとは褒められた気にはなるかな。
 ん? もしかしてモグロさん、その予言好きの人をチームに
 引き取ろうとか考えてるの? それはよしてよ」
「それは会ってみないことにはわからん。相手の意志もあるし。
 とりあえず、やってくれるか?
 お局さんに観光スポット教えてもらってくれ。
 フランスに詳しいだろ?」

すると赤の局が返事をした。

「フランスは何度も行ったよ。見どころを教えておくよ。
 現世の観光地を回るのがいいよ。
 その後、霊界のフランスの店に行けば料理もごちそうしてもらえるよ。
 パリの霊界には日本人の霊が一杯訪れてるから、日本人向けの
 コースがあるはずだよ。
 霊達の旅行は快適そのものだからね。楽しんできなよ。
 なにしろ、行きたいところに瞬時に移動できる。
 立ち入り禁止エリアにも入れるからね。
 何でも見ることが自由にできる」
「お局さん、ありがとう。
 勇樹達、成果を出せよ」
「お二人に一言、注意しておくよ。
 くれぐれもパリジェンヌの裸や濡れ場を覗き見しようとかすんなよ。
 時々それで向こうの警備隊に捕まってしまう日本の霊がいるんだ。
 みっともないったらありゃしない。
 男同志だとすぐこれだからね。
 もし、そんなことしたらモグロが叱られるんだからね」
「それは困る、お前らは大丈夫だよな?」

するとシンリが答えた。

「大丈夫です。私が勇樹を抑えますから」

勇樹はむっとした。

「俺が痴漢冤罪の二の舞みたいなことするわけねえだろ!」

最後にモグロがシンリに注意をした。

「シンリ、そんな乞食みたいな格好で行くなよ。
 紳士服店に行って”海外旅行者コーディネイト頼む”って言って
 服装を整えてから行けよ」

問題の予言研究家は、井波清造 一生を予言研究に費やした人である。
世界中のあらゆる予言を研究し尽くした予言マニアと言える。
いくつもの予言研究会やら防災研究会などにも所属しており、
ノストラダムス予言研究会を創設して会長をしていたこともある。
バリバリの予言研究家であった。
数々の予言の中で聖女ベルナルシアの予言が最も神様の意志に基づいた
信頼できる予言だと考えて晩年はこれに夢中になっていたのだ。

予言の内容は次のようなものであった。
20世紀初頭、ベルナルシアは少女の時、聖母マリアの出現を目にする体験をしたのだった。
その時、聖母様は第二次世界大戦が起きること、そして時期、また
終戦の時期、原爆投下、米ソ冷戦、そして冷戦崩壊、中国の台頭までを
正確に予言して伝えたのである。
ベルナルシアはその後、フランスの歴史ある修道院の修道女となったのである。
21世紀の初頭のある日、彼女はその修道院でも聖母様の出現を体験する。

聖母様はその時、ベルナルシアに重要なことを伝えたとされている。
この出現を契機に彼女は以前にも増して信仰心が強くなり、性格も変わった
とされている。よほど重要なお告げを受けたらしいと噂になったのである。
彼女はお告げについて聞かれると、

「聖母様から重要なお言葉を頂きました。
 でも聖母様は決して口にしてはいけませんとおっしゃられました。
 だから口にできません。もし口にしたら大変なことになってしまいます。
 絶対に口にはできない天のみが知る秘密なのです。
 私はこの秘密を天の国まで持っていきます」

と言ったものだから、様々な憶測を生むことになった。

「世界の終末についてのお告げだったのでは?
 第三次世界大戦の予言では?」
「環境破壊による破滅が起きることを教えてもらったのでは?」
「神様がこの世を畳む時がいつなのかを教えてもらったのだ」
「メシア再臨についてでは?」
「人類の起源が宇宙人であるということを教えてもらったのでは?」
「世界の影の支配者がレプティリアンであることを教えられた
 のでは? だから口止めさせたのでは?」
「イルミナティの支配が教会にまで及んだことを告げられたに違いない」
「AIが人類を滅ぼすことを予言されたのでは?」
「いや、人類の火星移住、そしてその為の選別についてだろう」

と世界中の予言研究家が想像を膨らませたのである。
井波もこれについて並々ならぬ興味を抱き、人類の未来に関する
重要な秘密が伝えられたのに違いないと晩年はこの研究に専念すること
となったのである。世界中の研究家があの手、この手で彼女から
聖母の言葉を聞き出そうとしたのだが、彼女は決して口にすることなく
高齢でこの世を去ってしまったのである。
身内や修道院の同僚にさえ決して口にすることはなかった為、
一体聖母様が何を伝えたのかは知る由もなかったのである。

しかも、この秘密は霊界の住人さえも知ることができなかったのである。
霊界は何でも知ることができる世界であるが、特別に規制が掛けられた
トップシークレットのような事は知ることができないのである。

井波はこの預言がどんな内容であったのか? あらゆる可能性を想定して
研究したのだが、結論を出すことができないまま、
自身も高齢のためこの世を去ることになってしまったのである。
強い執着を持ったままこの世を去ってしまったために、あの世から迎えが来ても

「お前は予言の秘密を知ってるのか? 知らないなら迎えなど拒否する。
 知ってる者を連れてきてくれ。あるいは、フランスに連れていってくれ!
 ベルナルシアに会わせてくれ!
 予言について教えてくれる者が来るまでここに留まる」

などと頑固に現世に留まっているのだった。
このまま地縛霊になってしまったら、井波の自宅は心霊スポットになってしまう。
その内、この男はフランスの修道院に押し駆けて迷惑をかけることも想定される。
あの世の警備チームが頭を抱えて応援を要請していたのだった。

モグロは、勇樹やシンリならこの頑固男を説得できるだろうと判断したのである。
あるいは聖女を説得して予言を聞き出すことができるかもしれないと思ったのである。
シンリは予言には興味がありそうだし、勇樹にはバカンスに行かせたいと思っていたので
丁度良い仕事だとも判断したのだった。

早速、シンリは町の洋服屋で平均的な旅行ルックを仕立ててもらい、髪も切った。
勇樹も旅行気分である。

「シンリさん、その昭和のハネムーン旅行者みたいな格好似合うじゃん。
 ずっとその格好しなよ。ピッチリ髪を整えるとイケメンだね」
「格好のことは言うな。それが煩悩というやつだ」

井波の家に行くと残品処理がされて空き家となった家に
ぽつりと一人頑固に座りこんでいる霊がいる。井波である。
二人は井波に声を掛けた。

「井波さん、随分、お迎えを拒否したらしいですね。
 仕方ないので我々があなたをフランスに連れて行ってあげます。
 まだ、外に出たことがないみたいですね。我々の後を付いてきてください」

すると井波はおもむろに口を開いて言った。

「ようやく来てくださったか。ありがたい。
 我がまま言ってすまないとは思っているんだ。
 だが、予言が気になって仕方ないんだ。
 秘密を知らないままあの世に行く気になれないんだ」
「私は勇樹、こちらはシンリさんと言います。一緒に行きましょう。
 死者は簡単に移動できるんです。
 ただし、ちょっと練習が必要です。まずは屋根の上に出てみましょう」

勇樹がぎこちなく動いてる井波を指導しながら、屋根の上に連れていった。

「おお、屋根に上がることができた。年取ってから高いところに上がったことは
 なかったから、久しぶりじゃ。屋根から見る街並みは普段とは違う雰囲気じゃな」
「じゃあ、このまま上昇して空を飛びましょう。大丈夫、怖くないです。
 落下することも、ケガすることもありません」

恐る恐る井波は空中に飛ぶことができた。

「まるで鳥のようだな。きもちいいなあ。
 家がどんどん小さくなっていく。
 まるで衛星写真を見てるようだ」
「じゃあ、一気に大気圏の外まで飛びますよ」
「ええ、そんなことができるの?」
「どこでも一瞬で移動できるんですよ。信じてください」

勇樹は井波の腕をしっかり握りながら、大気圏外まで移動した。
眼下には、青い地球が見える。美しい姿である。日本の地形も見えている。

「おお、宇宙飛行士になったようじゃ」
「では、宇宙ステーションまで行きますよ」

次の瞬間、宇宙ステーションが目の前に見えた。見事な装置である。

「これが国際宇宙ステーションか?
 SFの世界みたいじゃな」

と井波は感激した。

「早速、ベルナルシアが居た修道院に行きましょう」

と言うと瞬時に歴史ある修道院にたどり着いた。門には門番みたいな男の霊が
立っている。そして大勢の天使のような存在が空中にいて一行を見つめている。
シンリが門番に「我々は日本から来ました。ベルナルシア様にお会いしたいです」と
告げると事前にアポがあったようで、門番は快く中に入ることを許可してくれた。
修道院は質素な教会のような感じであった。

奥に行くとベルナルシアが祈りを捧げていたという聖母像がある。
そこには蝋燭の炎がともされており、その炎は1000年前に聖者がともしてから
一度も絶やしたことがない炎であると書いてある。
とても厳かで不思議なエネルギーに満ちた修道院である。

勇樹達が聖母像から心地よいエネルギーが出ているので見とれていると
像から聖母様がすうっと出現したのだった。

「あ、聖母様がご出現された」

と3人はひれ伏した。ひれ伏しながら井波は小言を口にした。

「現れた聖母様って聖母像よりずっと若くて美人だな。
 まるでピチピチギャルだ。それに現代的な顔付きだな」
「こら、失礼なことを言うんじゃない」

聖母はにこやかな顔で一行に声を掛けた。

「ようこそ日本から来てくださりました。
 お話は聞いてますよ。ベルナルシアはここではなく、
 天の世界に居ます。天上に行き、聞いてください。
 場所をご案内します」

井波はここでせっかちな質問をしてしまった。

「ベルナルシアさんに聞くまでもなく、聖母様、あなたに教えて頂きたいです」
「ベルナルシアの口から聞いてください。
 私はベルナルシアに告白することを許可しました。だから
 彼女は告白したがっています。
 あなた達が来るのを首を長くして待っているはずです」

すると井波はずうずうしく聖母に予言を求めた。

「聖母様、あなたは第二次大戦や原爆投下を予言されました。
 ならば、これから世界に何が起きるのか?戦争が起きるのか?
 教えて頂けますでしょうか?」

すると聖母はにっこり笑って答えた。

「100年以上前に予言を与えた聖母は私ではありません。
 私はこの教会の担当です。私は未来の予言は得意ではないです。
 私がここでベルナルシアに伝えたことは決して明かされなかった秘め事です。
 未来の予言ではないです。現世の人達には決して言えない秘密です。
 それは彼女の口から教えてもらってください」
「なんですって? 最初に出現された聖母様とここで出現されたあなたは別人?
 訳がわかりません」

井波と勇樹が困惑しているとシンリが耳元とでささやいた。

「聖母様と言っても一杯いるんだよ。日本でも天照大神がそこらじゅうに
 祭られてるだろ、みんなそれぞれ違うんだよ」
「ええ、じゃあ、天地創造の神様も一杯いるってこと?」
「ここでそんなこと議論してる暇はないよ。
 とにかく聖母様がそう言ってるんだからしかたないよ」

「未来の予言でなくてもいい。人類の隠された秘密ならば。
 これが初めて明かされるんだ。わくわくしてきたぞ」

と井波は身震いした。
シンリもこういう話が好きなようでワクワクして落ち着かない感じである。

一行は言われた通りに天上の霊界に移動した。上の方にある階層のような世界である。
ここにも大きな門がある。そこの門の中に世界が広がっているようなのだが、
3人は何だか胸騒ぎというか、肌感覚で「熱い、眩しい」と感じるのである。

「シンリさん、何かここ居心地よくないですね。太陽も強い日差しに感じられます」
「うん、我々が居る世界と太陽が微妙に違うみたいだ」
「そういえばモグロさんが太陽は場所によって異なるとか?言ってたな」
「私には未だよく理解できないんだ。太陽はそれぞれ世界によって異なる。
 でも全ては同じ源泉に繋がってるような感じなんだ」
「つまりWi-Fiみたいなものですよ。どこのWi-Fiでも繋げれば同じネット世界に接続できる」
「なるほど、さすがデジタル世代だな」

門番は聖母から連絡を受けたようで「ようこそ、中へ」と歓迎して門を少しずつ開け始めた。
すると門の向こうからはまぶしい光が強烈に差し込んだ。

「うわーなんて強烈な光だ。LEDの束みたいだ」

3人がまぶしそうにしているので門番はあきれたような顔をして門をしめた。

「あんたらには、中の世界のエネルギーが強すぎて耐えられないみたいだな。
 つまり入る資格がないってことだな。しかたない。
 ベルナルシア様にここまで来て頂くことにする。
 ここで待っていなさい」

とのことである。すると即座に門の前に応接セットのようなものが
準備されたのである。3人はそのソファに腰かけて待っていると
すうっと女性が現れてきた。女性はにっこりしながら、挨拶をした。

「私がベルナルシアです。ようこそお越しくださいました」

とても品のよい優しそうな女性である。聖女という言葉に相応しい感じである。
勇樹とシンリは見とれていたが、井波だけは変な顔している。

「あなたがベルナルシアさんですか?写真と全然違いますね。
 写真よりもずっと若くて美人だ」

と口にした。勇樹はまた井波を叩いた。

「失礼なこと言うな」

ベルナルシアは3人の目的を全て察してるようであった。

「あなたが井波さんとおしゃる方ですね。私のことをずっと
 研究してくださったのですね。とてもうれしいです。
 あなたの情熱は並々ならないものであると聞いていますよ。
 今までで一番強い興味と意志をもった方ですね。
 せっかく来ていただいたのであなた達だけに教えます。
 私が聖母様から頂いた預言を全てお話します」
「井波です。教えて頂けるのですか? それは光栄です。
 生きていた甲斐があります。いや、死んだ甲斐があります」
「霊界では秘密にする必要なんてないんです。
 ただ興味本位の方には教えたくなかっただけなんです。
 でもあなたのような人生を掛けて知りたいと思った方には教えたいと
 思っていました。本音を言うと言いたくてうずうずしてたんです」
「ありがとうございます。早速教えてください」
「それでは教えます。
 聖母様がご出現されて私がお言葉を頂いたのは一人で修道院の
 番をしていた時なんです。
 実はこの修道院には1000年以上前に聖者が灯した不滅の炎があるんです。
 その時、私はうっかりして居眠りをしてしまい、炎を絶やしてしまったんです」
「ええ、そんな大変なことをしてしまったのですか」
「そうです。その時は生きた心地がしなかったのです。
 気が動転してしまいました。失神しそうになってしまいました。
 その時、聖母様がご出現されたのです」
「ということは・・聖母様が炎を復活させる奇跡を起こしてくださったのですか?」
「ふふふ、面白いことを言いますね。でも違いますわよ。
 聖母様は私の動揺した心を落ち着かせてくださったのです。
 そしてこうおっしゃられたのです。

  ”嘆くのはおよしなさい。
  炎を消してしまっことを悔やまなくてよいです。
  炎を消してしまったのはあなただけではありません。
  今までに300回ほど絶やしてしまっています”

 といって今まで消してしまった失態の場面を次々と見せてくれたのです。
 みんな、誰も見てないことをいい事にすぐに再点火して
 何もなかったようにごまかしていたのです。それを見せてくれました。
 
  ”炎を消してしまっても何も問題はないのですよ。
  同じ炎です。何にも変わりはありません。
  聖者もそんなこと気にもしていません。
  心配しなくていいですよ。
  ただし、消してしまったことは絶対に口にしてはいけません。
  私が現れたことだけを伝えなさい。
  秘密の預言を受けた。決して口にしてはいけないと言われたとだけ伝えなさい
  人はそれを聞いてあれこれ想像を膨らませて信仰心を高めるでしょう。
  あなたも人々の注目を集めることができます。”

 それで気持ちが楽になりました。聖母様はなんて優しいお方なんだろうと
 思いました。私の信仰心はこれでますます強くなったのです。
 本当を言うと修道院生活が退屈でもう逃げたいと思っていたんです。
 でも、聖母様がご出現してくださったお陰で私は世界中から注目されて
 人気者になることができました。幸せな人生でしたわ。

 私が何故この預言を秘密にしたのか? お分かりになったと思います。
 言ってしまったら、私が炎を絶やしたことがバレてしまいますし、
 修道院のイメージも悪くなってしまいます。だから
 これだけは絶対に口にできなかったのです」

ベルナルシアは秘密を打ち明けたことですっきりしたような表情だった。
これが聖母の預言の真相だったのである。

井波とシンリはこれを聞いて肩透かしを食らったようにショックを受けて
無言になってしまった。
人類の終末、あるいは隠された秘密だと思っていたのにこんなローカルな話だったからである。

「人類の秘密じゃなくて、この修道院の秘密だったの?そんなことだったの?」

その気まずい雰囲気を立て直そうと勇樹が笑いながらコメントした。

「聖母様はすごく優しい方なんですね。感動しました。
 井波さん、これで謎が解けましたよね。
 あなたの並々ならぬ情熱が謎を解明したんですよ。
 よかったじゃないですか?
 これでもう思い残すこともなく成仏できますよね?
 これからあの世でどうすごしますか?
 我々の仲間になりますか?」

井波は勇樹の前向きな言葉でショックから立ち直ることができたようである。
にっこり笑いながら答えた。

「うん、そうだったんだね。
 事実は小説よりも奇なり その通りだね。
 これからはあの世で予言のコミュニティに参加して
 新しい予言をまた発掘することにするよ」
「まだ、予言にこだわるんですか?
 予言なんて全然当たってないじゃないですか?
 未来は決まってないってことですよ。
 まあ、じっくり考えてください。
 今日は、これからフランス観光にでも行きましょう。
 井波さん、フランスのことは詳しいんですよね?」
「ああ、フランス語がわかるし、名所くらいはたくさん知ってるよ」
「じゃあ、今度は我々を案内してくださいな」
「わかった。そうするよ。
 君たちには感謝しているよ。本当にありがとう」

つづく



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