本作品は2016年作です。

●霊能サロン「ドロン・ドロ」 シリーズ●

<第12話 戦国の英雄>

 事件から暫く時が経ち、みさはショックから立ち直り、占い部屋に出勤することができた。

出勤すると占い師達が戦国武将のアイテムやゲームなどを見せて話が弾んでいるのが
聞こえてくるのであった。
今年はまた子供達の間で、戦国武将がブームになっているようである。
それに合わせて占い部屋の占い師達の間でも武将が話題となっていたのだ。

「うちの子供、武将のカードを集めているの。人気はやっぱり真田幸村みたい」
「そりゃそうよ。幸村は勇敢だし、筋を通した男の中の男ですもの」
「私は謙信が好きだわ。あんなに強くて立派な人はいないわ」

 みさはあまり歴史のことを知らない。有名な武将くらいは知っているが
歴史の知識に自信がないので会話にはいつも参加しなかった。
歴史の話題は、教養のなさを実感させられてしまうので嫌いだったのである。

 そうこうしているとお客が入ってきた。珍しく白髪の男性の老人である。
その老人は不思議なオーラを放っており、みさには白いオーラが周囲に広く放出しているように見えた。
みさが「いらっしゃいませ、ご相談でしょうか?」と聞くと
「相談というよりも、伝えたいことがあるんじゃ」と答えた。
老人は続けて話し出した。

「わしはじゃな。昔から気功をやっていて仙人を目指していたんだよ。
 中国に縁があってなあ。台湾に修行に行ったこともあるよ。
 若い頃は神通力があって名を馳せたものじゃ。病気や悩みを持つ人が
 行列を作って殺到したこともある。今はもうそんな力はないがな。

 わしには見えるぞ。そなたの背後には異国の神様が大勢見えるぞ。
 しかも、夜、仙界に行って会っておるじゃろ」
「仙界とは何ですか?」
「すまん、つまりあの世のことじゃ。
 恋の交わりもしておるな。いやいやスケベ爺の戯言じゃないぞ。
 わしも天女と恋をしたことがあるんじゃ。若い頃の話じゃがな。
 これが出来る人間は滅多におらん。秘奥の術なんじゃ。鍛錬の極みじゃ。
 そなたは行もせんでそれができるようじゃな。生まれる前からの縁じゃろ。

 すまん、つまらん前置きばかり喋って。
 わしはもうすぐ仙界に戻る時期がきたんじゃ。そこで各地を周り、
 会いたい人に会って話を伝えておるんじゃ。

 ところで、そなたはこの土地を治めていた武将 井喜田成勝を知っているかな?」

「ごめんなさい。私、歴史に詳しくないので・・」
「はは、歴史に詳しい人でも井喜田成勝なんて知らんよ。教科書にも書いてないからな。
 この人の墓がこの地にあるはずじゃ。是非お参りして欲しいんじゃ。そなたが
 お参りすることできっと良いことがあるはずじゃ。そなたと会いたがっておるぞ」
「わかりました。調べてみます」

 みさは最初、また変な人が来たか?と思ったが、
この人はどこか不思議なオーラを放っているのでただのおかしな人ではないと感じた。
 自分が夢であの世に行っていることを当てたこともショッキングであった。

「今、巷では戦国武将がブームになっておるようじゃな。どこもかしこも
 武将、武将ばかりじゃ。それは世の流行というものじゃからどうでもいいことじゃが、
 そなたには教えておきたい。
 仙界から見た戦国時代と皆が言ってる戦国時代では有り様がちと違うんじゃ。
 あの世から戦国時代を見ると面白いぞ。
 霊の世界の勢力争いによって戦況が動かされていたのじゃ。

 例えば信長じゃが、背後にははっきりとスペインとポルトガルの霊的力が
 働いていたぞ。信長を国王に仕立てて国を乗っ取る野望が見えたぞ。
 信長があれだけ強かったのはその為じゃ。
 そして信長は明智光秀の謀反で殺されたことになっておるが、霊的世界から
 見たら明智は単なる実行犯にすぎない。あらゆる日本の勢力が協力して信長を葬ったのじゃ。
 信長の背後にいる勢力に気づいたからじゃ。国を守る勢力が団結したんじゃ。

 更に言うと家康が天下を取った勝因は霊界から見るとはっきりわかる。
 それは中国・朝鮮の勢力も味方をしていたからじゃ。
 日本の大陸進出を阻止するために家康を味方していたんじゃ。

 信長や秀吉は大陸進出の野望を抱いていたが、
 家康は無謀な野望は抱いておらんかった。
 戦乱を終わらせて国を治めることのみ考えていたのじゃ。
 現実的な男じゃった。
 だから中国・朝鮮の霊団はこの男が天下を取るように支援していたのじゃ。

 徳川の軍が大阪城を責めた時などは朝鮮の霊団も大勢加勢して
 凄いことになっておったぞ。ほとんど霊界の戦いじゃったぞ。
 秀吉は朝鮮出兵で墓穴を掘ったということじゃ。
 霊的世界から見るとはっきりわかるぞ」

 みさには難しい話ではあったが、何となく理解できた。この爺さんが喋ると
 背後に映像やらオーラやらが見えるからである。

「ありがとうございます。勉強になりました」とみさは答えた。
 老人は言いたい事を言ったというすっきりした表情で帰っていった。

 みさは帰りに図書館に行って郷土史を調べて見た。井喜田成勝の墓は隣の町の
お寺にあることが分かり、定休日に行ってみることにした。呼ばれているような
気がしたからである。行ってみるとお寺は意外にも小さかった。

みさは井喜田成勝の墓を見つけると花を供えて手を合わせた。
墓地の周辺は強いパワーに満ちており、みさには空からエネルギーが降り注いでいる
ように感じられたのであった。
「墓地でこんなにエネルギーがあるのは珍しいわ」と思った。
手を合わせていると武将のような姿をした人が目の前に現れた。
質素な感じではあるが、光り輝いている武将の姿が見えた。
その武将はみさに語り掛けた。

「参拝してくれてありがとう。あなたのことは天から聞いて幼少の頃から知っていた。
 あなたには立派な使命があることを覚えておいてほしい。
 決して自分を無価値などと思わないように。
 わしはあなたを守護していたが十分に守ってあげることはできなかった。すまん。

 ところで一つお願いがある。この町の峠下町2丁目にある山なんじゃが、今後、
 土砂崩れになる恐れがある。補強工事が予定されているがその前に豪雨で崩れて
 住民が巻き込まれる恐れがある。それを伝えて欲しいのじゃ。予言と言う形で
 警告して欲しいのだ。ちょっと話題にするだけでよい。補強工事を促すことができれば」

と伝えてきた。みさはこの武将が腰の低い人であり、地域のことを今でも考えて
くれている人なんだと分かり、感激した。
しかも自分のことを生まれてからずっと目を掛けて
いたと聞いて強い親しみを感じたのであった。

「わかりました。言う通りにいたします」と答えた。
武将は最後にみさにもう一つ依頼をした。

「国の為、町の悩める者達のために是非力になってほしい。
 もう一つお願いがある。
 ここに集まるこの地の無縁仏達を供養して欲しいのだ。
 あなたは力がある者だから、お願いする」

みさはこの武将の光に縋ってきている霊達に祈りを捧げてお寺を後に帰路についた。
スマホで検索すると峠下町2丁目は裏山の崖の工事について現在もめていることがわかった。
住民は一日も早く補強してくれないと土砂崩れになると訴えているが役所はなかなか
動いてくれないということで住民との間でもめているようであった。

 社長の有子にこの話を相談してみた。有子は悩んだが一計を案じた。
「みさが見たことは信じるわよ。でも、井喜田成勝からのお告げって言ってもねえ。
 ほとんど知名度が無い人なのでインパクトがないのよ。
 そうねえ。ブログに占い師の予言として書いてみようかしら。
 垰山の崖が危ないって何人もの占い師が予知したって。インパクトあるわ」
「でも世間を騒がせたとかで訴えられないかしら」
「大丈夫よ。たかが占いと人は思うだけ。でも気になるのよ。人はそういうもの
 最近私のブログは人気が上がってるのよ。みさのお陰で不思議な話題が増えたから」

みさは依頼内容がスムーズに実現する数字11,999,285,901,759,668,185を紙に書いて
そこに依頼事を書いて護符として身に着けた。

みさはこの武将がどんな人なのか?興味を持って占い部屋で歴史好きの人に
聞いてみることにした。

「あのう、お聞きしたいのですが・・
 井喜田成勝という人をご存じでしょうか? この地を治めていた武将ですが」
と聞いてみた。すると歴史好きの占い師は軽蔑したような顔で答えた。

「知ってるわ。この土地を古くから治めてきた井喜田家の武将よ。
 成勝は戦国時代の武将。はっきり言ってダメ武将。
 井喜田家って日和見主義で意気地なしなのよ。
 この土地は武勇伝が全然ないの。それはこの井喜田家がふがいないからなのよ。

 去年も県の観光担当の人が町おこしの武将をさがしていたけど、井喜田家は
 戦をほとんどしてないので何にもネタが無いって嘆いていたわ。
 戦国時代だけでなく戊辰戦争の時も官軍にすぐになびいて、言いなりだったそうよ。
 きっと戦が怖かったのよ。武士としては最低ね。
 情けなくてお国自慢ができないわ。

 特に戦国時代の成勝、この人はその中でも最低中の最低。
 ずっと武田家に仕えてきたのに信玄が亡くなって力が衰えたら、寝返って
 信長と一緒に武田を責めたって話よ。恩を仇で返したのよ。

 その上、美人で有名だった末娘を信長の言いなりに差し出したそうよ。
 保身のために娘も差し出すなんて。
 もう〜張り倒してやりたいくらいのダメ男ね。最後は家臣に殺されたのよ。
 しかも、殺される前に「金を出すから命を助けて」って命乞いをしたという
 伝説が残ってるわ。全く絵にもならないダメ男だわ」

歴史好きの女性はボロクソにこの武将をけなした。地元の人達の間でも
そのように言われているらしいのである。
政宗、信玄、幸村などのような武勇伝のある武将が地元に居れば誇れるのだが、
この地には日和見主義で意気地なしの武将しかおらず、自慢どころか恥であるという
雰囲気になっているらしいのだった。
みさはがっかりした。墓参りした時は立派な人だったと感じたのに。

「でも、優しい人だったことは確かね。優しいけどダメな武将だったのね」

その夜、みさは夢の世界でダギフ様に、井喜田成勝のことを話題にしてみた。

「その人は領主だったの。意気地が無い人で恥と言われているの。
 でもお墓は光に包まれていたわ。どんな人でも位が高いと光に包まれる
 のかしら? 神様は身分で人を差別するのかしら?」
とダギフ様に言ってみた。ダギフはそれについて答えた。

「その人がどんな人だったかは今日、図書室で見ると良い。こちらの世界では
 何でも見ることができるんだよ。さあ、そちらにある図書室に行ってみなさい」

みさが宮殿の図書室に行くと真ん中にスクリーンのような大きな白いものが
立ててあった。「何か現代的・・」と感じた。椅子に座ってスクリーンを眺めて
みると見たい映像が映し出される装置になっていた。まるで映画のようである。
不思議なのは映画よりも立体的でリアルに見えることである。しかも、映像の
情報だけでなく登場人物の気持ちなど細かいことが全てわかるのである。

 みさが井喜田成勝のことを知りたいと思っただけで、お墓で見た武将が
映し出された。時は戦国時代、武田信玄が亡くなり、後継者の勝頼も長篠の戦い
で敗れ、武田家の威信は地に落ちていた。
織田・徳川の軍勢は武田を追い詰めており、武田と同盟を結んで背後から支援して
いた井喜田家は織田の軍勢から寝返るように迫られていた。
家臣達は武田につくか、織田につくかを巡って壮絶な議論を繰り返していた。
大半の家臣は長年仕えてきた武田の恩に報いるべき、
討ち死にしてでも忠義を尽くすべきとの意見を持っていた。
しかし、織田・徳川軍と戦っても負け戦になることは誰の目にも明らか。
意見は拮抗し、徹夜の討論でも話はまとまらない。
それをずっと聞いていた成勝は口を開いた。

「みなのもの、わしの意見を言わせてもらう。
 我が井喜田家は代々、武田と同盟を結び、守って頂いた恩義がある。
 恩義に報いるのが武士の道であろう。

 しかしである。もっと大事なことがあるのだ。
 それは領民だ。この土地は田畑が肥沃ではない為、農産物が良く育たない。
 その為、我らは先祖代々この地の漁業や工芸に励み、ようやく領民の生活が
 安定するようになった。我らが生きていられるのも皆領民のお陰である。
 我らはずっと領民と苦楽を共にしてきたのだ。

 もし、ここで我らが負け戦をして領地を召し上げられたらどうなる。
 われらは元より領民の生活も元の木阿弥に戻ることになるだろう。
 見知らぬ者がこの地を治めたら領民のことなど考えずに圧制を敷くであろう。
 領民は厳しい生活を強いられることになるであろう。
 それだけは避けなければならぬ。
 この地をよそ者に渡してはならぬ。そして決してこの地を戦の場としてはならぬ。
 忠義よりも戦を避ける選択をすべきである」

成勝のこの熱き想いは家臣達の心を動かした。
「裏切り者のそしりを受けようとも天下に恥を晒そうとも我らはこの地の領民を守る」
との決意の元、織田に寝返ることを決意したのであった。
織田側が美人で有名な末娘をよこせと言ってきたことについては成勝は
「それだけは飲めぬ」と頑なであったが娘は成勝の板挟みの苦悩を案じて
「私は織田にもらわれていきます」と申し出た。
「どこぞの誰かの側室にされるかもしれぬぞ」と言うと
「それは覚悟の上です。国の為ならこの身一つなど捧げます。
 どのような状況になってもこの国の為に尽力いたします」
と毅然と答えたのであった。

その結果、成勝は危機を乗り越え、織田の傘下として領地を守ることができたのであった。
しかし、家臣の中には武田を裏切ったばかりか恩を仇で返したことに対する恨みを
抱く者もいて、ある日、成勝は襲撃されてしまう。争いを避けるため成勝は必死に命乞いを
したが討たれてしまった。

重症を負った成勝の元に駆け付けた息子の成重は
「お父上、この仇は必ず取ります。謀反人は全て裁いてみせます」と告げた。

すると成勝は厳しい表情で答えた。

「いかん。今内輪もめはしてならぬ。わしが討たれたことはすぐに忘れるのだ。
 もうわしの時代は終わっていたのだ。
 わしのことを名君のように称えて対立を煽ってはならぬ。そしりを受けても構わぬ。
 今は火の子を消すことに努めるのじゃ。仇とて同じ仲間じゃ。和睦するのじゃ。
 そして一刻も早くお前が領主となり、国をまとめるのじゃ。
 決して分裂の火だねを作ってはならぬ。国を盗られる隙を作ってはならぬ。いいな」

そう遺言を残してあの世に旅立ったのであった。

スクリーンを見ていたみさは成勝の熱い想いがはっきりと感じられたのである。
ダギフ様が図書室にやってきてみさに言った。

「立派な人だったようだね。
 光が降っていた理由はこの人の生きざまによるものだよ。
 身分で優遇されてるわけじゃないよ。

 人々が思ってる歴史と実際は違うことがある。
 でも、全ては霊界でははっきりわかることなんだ。
 霊界では嘘・偽りで隠すことはできないし、
 立派な行いはきちんと認められるんだよ」

みさは感動で涙がこぼれるのを感じた。

 後日、出勤すると社長から電話があった。
「みさ、先日言ってた峠山の崖の話なんだけど、ブログに書いたら結構騒ぎになったのよ。
 住民から工事を優先してやれと苦情が沢山役所に届いたみたい。
 役所は住民の要望が多く来たので前倒しで工事をするってことにしたそうよ。
 よかったわね」とのことだった。

みさは思った。

「成勝さんは今でも領民のことを考えているのね。
 この人は本物の男。本物の武将だわ。
 成勝さん、あなたは有名な武将よりもずっとカッコいいわ。
 あなたこそが領地を戦から守った戦国の英雄よ」

シャップが横でみさに寄り添って語り掛けた。

「当時、成勝のような武将はたくさんいたんだよ。
 国や民のことを思っていたから強い者に従って戦を避けたんだよ。
 だから武勇伝も残っていないし、名も知られていない。
 世間の人はこうした無名の人を臆病者、無能と見下すけどね」

つづく

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