本作品は2016年作です。

<僕の可愛い彼女>

 秋二は今日も朝早くから出勤した。彼はもうすぐ30代になる都内の若者である。
駅まで行く途中に小さな神社があるが、そこでいつものように参拝をするのが日課となっていた。
参拝している理由は、ご利益欲しさもあったが、ほとんど忘れられているような淋しい神社なので
なんか可哀想だなと思ったからであった。秋二はそういう男だった。

 秋二は派遣労働者であった。
今通勤している職場は小さな会社で雑貨を取り扱う商社であった。
秋二はまじめに働いたので社長から気に入られており、「3年勤めたら君は正社員にしてあげる」
と約束してもらっていた。秋二は正社員になれるチャンスとばかりに遅くまで働き、
社長に言われた通り、勤務記録には残業時間を付けなかった。そればかりか、職場の
資料を自宅に持って帰り、休みの日に必死に仕事を覚えて頑張った。

「あと1年で正社員になれる。家庭が持てる」

 秋二は希望を胸に今日も出勤したのであった。

 彼の趣味は旅行であった。子供の頃に鉄道のプラモデルを作るのが好きだったのが
きっかけで旅行に興味を持つようになった。自宅に帰ると旅行関係のSNSを
アクセスして仲間達と旅行について情報交換するのが一番の楽しみであった。
たまに仲間達と旅行やハイキングなどに行っていたが、お金が無いので同じ様な境遇の
仲間達とお金のかからない旅を企画しながら楽しんでいた。
秋二はここで抜群の才能を発揮していたのだった。天性の才能と言われることもあった。

 だが、本当はもっと贅沢な旅行をしてみたいと思っていたのだった。
結婚をして可愛い妻と子供を連れて車で各地を旅してみたいと思っていた。
温泉付のホテルに泊まって贅沢な料理も食べてみたい。そんなことを夢見るのであった。

「その為には派遣ではダメだ。正社員にならないと・・
 いつか正社員になって結婚してやる。
 きゃりーぱみゅぱみゅ みたいな可愛い人と結婚する」

 そんなことを夢見るのであった。
この日、職場でいつものように仕訳や梱包の仕事をしていると社長がやってきて
気まずそうな顔をして秋二に話しかけた。
「秋二くん。すまないが派遣の契約はこの9月で打ち切りにすることになった。
 すまない。君には正社員にするなんて口約束してしまったが、
 それは無かったことにしてくれ」
と社長は頭を下げた。
「ええ、どうしてですか? 僕に何か問題でも?」
「いや、そうじゃないんだ。取引先が急に注文を減らすと言って来たんだ。
 ここ最近の不景気の影響みたいなんだ。来期からうちの仕事は激減する。
 君の給料を払えない状況になりそうなんだ。すまない。許してくれ」
「そんな。この2年間必死に仕事を覚えたのに。それが無駄になってしまう」

社長がすまなそうに頭を下げているのでこれ以上文句も言えない。
「なんてこった。また仕事を失った。1からやり直しだ。
 次の仕事もあるのかどうかわからない。
 ああ、なんということか。
 就職氷河期に正社員になれず、一度なれなかった人はもうチャンスはない。
 政府は派遣の問題を本気で解決する気がない。僕にはそれがはっきりわかる。
 だれかが損をすることで成り立っている世の中なんだ。
 これが現実というものなのだ」

 秋二の希望は打ち砕かれた。
「このまま年取ったらどうなるのか? 結婚どころかホームレスか?」

帰りに神社に寄った時、ついに神様に愚痴を言ってしまった。
「神様、また希望を失いました。
 僕には家庭を持つことはできないんでしょうか?」
すると神社の拝殿からふう〜と風が来たような気がした。そして全身に暖かいものが
這いまわるような感覚がしてきた。
「なんだ、ポカポカする」
そして、絶望のどん底にあった秋二の心が何故か気分よくなったのである。
「大丈夫さ。なんとかなるさ」と感じたのである。
この感覚を感じてから何故か神社のことが気にかかるようになった。

翌日の朝、神社に参拝するついでに看板を読んでみた。
この神社はアメノウズズノミコトを祭っていることが分かった。
神話に登場する小柄な芸能の女神である。
この場所には昔大きな寺社があり、この摂社だけが残っているようであった。
「へえ、芸能の女神か、きゃりーぱみゅぱみゅ みたいな神様だな」
秋二はこの神様に理想の彼女像を重ねて親しみを感じたのであった。
夜にネットで調べてみると、どうやらこの神社は商店街の一等地にあるので
地元商店街の人達は神社を潰して開発すべきと考えているらしい。
神社を守ろうとする人達もいてもめていることがわかった。
地域板の情報ではどうやら商店街の主張が有利になっているらしい。
そろそろ潰す結論が出るらしい。

「そうなんだ。この神社は潰されるのか。なんか淋しいなあ」
などと考えていると突然脳天に風が吹き込むような感覚がしてきた。
「あ、何だ」と思っていると目の前に文字が浮かんできた。くっきり字が見える。
習字で書いたような縦書きの文字である。それはこのように書いてあった。

「いつも参拝してくれてありがとう。アメノウズズノミコトです。
 私はあなたを守護してあげます。
 お願いがあります。神社を助けて欲しいのです。
 商店街もこの近くの神社の神様も私を消し去ろうとしています」

なんと、メッセージがはっきり目の前に現れたのである。

「うわ〜 なんだ。これは・・
 神様のメッセージ。うっそだろ。こんなことがあるなんて」

秋二がビックリ仰天しているとまた目の前に文字が浮かんだ。

「3日後の10日午後3時頃に北海道の種辺町で震度7の地震が起きます。
 それをブログに書いてください」

秋二はこのメッセージを見て驚いた。
「ええ、予言? 嘘でしょ?
 もしかしたらこれは幻覚。俺、頭がおかしくなったのかな?」

などと困惑していたが、
「もしかしたら本当に神様のメッセージかもしれない」
ちょっと聖者になったような気分になり、自分のブログに書くことにした。
旅行関係の情報を掲載している自分のブログにである。
ほとんど仲間しかアクセスしない地味なブログではあるが・・
その日の日記にメッセージを書いてみた。

3日後の10日午後3時頃に北海道の種辺町で震度7の地震が起きるって
神様からのメッセージがあった。地元の神社のアメノウズズの神様だよ。

これを見た仲間達の反応は冷ややかだった。
「どうしたんだよ。いきなり予言なんて。大丈夫か?」
という反応だった。

しかし、それがとんでもない事態になることを予想もしていなかった。
3日後の午後3時に本当に北海道の種辺町で震度7の地震が起きたのである。
ブログが検索に登録されていたので一気にアクセスが集中してとんでもない
アクセス数になっていることに驚いた。問い合わせのメールが100通くらい来ている。
あちこちのサイトでも秋二のブログが正確に地震を予知したことが紹介された。
予知のメッセージの主が地元の神社の神様であることも話題の中心となった。
翌日から突如として神社に大勢の人が参拝に来る騒ぎとなったのである。

 秋二はいきなり自分が時の人になったことに驚いた。
「凄い。僕のブログを何十万人もの人が見てくれている。爽快だな」

するとまた、目の前にメッセージが現れてきた。
「アメノウズズノミコトです。
 明日、大物歌手が覚せい剤使用で逮捕されます。Kで始まる歌手です。
 それをブログに書きなさい」

秋二はメッセージの通り、ブログに書いた。
すると翌日、本当にKで始まる歌手が逮捕されるニュースが日本中を震撼させた。
これまたあちこちのネットで「予知が実現」と大騒ぎになった。
秋二はまたもや注目の人となったことでワクワクした。
「すごいなあ。僕は予言者になったんだ。それともメッセンジャーというのかな」

「もしかして、これで生活できるかな? 大儲けできるかな?」
などと考えているとまたメッセージが降りてきた。
「予言で生活するのは危険です。ロクな事がありません。
 それより、私の神社を助けて欲しいのです。
 私の神社を残して欲しいとブログに書いて欲しいのです。
 私は日本を救うことができます。
 協力してくれるなら、あなたを正社員にしてあげます」

 秋二はメッセージを読んで思わず叫んだ。
「え、正社員に。結婚もできるの?」
するとメッセージが現れた。
「もちろんです。
 あなたの理想の彼女が現れます。
 一緒に旅行に行けます」
「やっほー、やってやるぜ」

 秋二はブログに、神社の神様が特別な力をもった神様であり、
日本を救うこともできると訴えた。
すると神社には連日のように参拝者が行列を作るようになったのである。
これにびっくりした商店街の人達の間で神社を町おこしに使おうという案も
出るようになった。

 秋二のブログはたちまちスピリチュアル系のブログランキングで
1位のアクセスを記録するようになった。
旅行マニアのブログが突然、スピリチュアル系の1位に登場する
など異例のことであった。

「スピリチュアルか・・優しそうな女性が大勢居そうだな
 僕の彼女になる人はスピリチュアルの人かな・・」

と思って秋二が登録している無料婚活サイトを久しぶりに開いてみた。
秋二は婚活サイトに登録して何度か女性に申し込みをしてみたが一度も
回答が返ってきたことはない。
おそらく年収と身長の値で却下されているのだろう。無駄な努力だと諦めていた。
就活で断られ続けたトラウマがあるので婚活でも断られ続けるのはまっぴらごめんであった。
「もしかしたらスピリチュアルの人なら断らないかもしれない」
と思って「スピリチュアル」のキーワードで検索すると1件の女性がヒットした。
どんな人か?とプロフィールを覗いてみると

「私はスピリチュアルが大好きです。
 人の心を大切にし、優しさと思いやりを大切にする生き方をしたいです。
 世の中を良くしたいと思う人を希望します。心の温かい純粋な人が好きです。」

これを読んで秋二は「この人なら僕でも相手にしてくれるかもしれない」と
期待を躍らせた・・だが、プロフィールの最後の方に次のような記述があった。

「私は決して高い理想を求めません。
 でも、最低限譲れない条件があります。
 条件に全て合う人だけ連絡くださいね。

 ・スピリチュアルが大好きな人
 ・年収 700万円以上
 ・身長 180cm以上
 ・容姿がダンスグループ EXIREE のメンバーみたいにセクシーで
  ファッションセンスがいい人 」

秋二はがっかりした。

「アホか。そんな凄い人がこんなサイトで婚活するわけないだろうが!
 やっぱりダメだな。これが世の中の現実なんだ。僕なんか論外なんだ」

秋二が落ち込んでいると、また神様のメッセージが降りてきた。

「そんなページなど見なくてもいいです。
 あなたに理想の彼女が現れます。もうすぐです。
 心の優しい可愛い人があなたの彼女になります」

秋二は毎日ブログに神様のメッセージを書いた。
神様のメッセージはスポーツの試合結果や事件などあらゆる分野の
予知を降ろしてくれていて、秋二はそれをそのまま書くだけでよく、
簡単なことであった。

 ある日、SNSの仲間からメールが来た。

「秋二さん、今月で仕事が無くなるって言ってましたよね?
 いい話があるんです。
 世話になっている旅行代理店の人から求人の依頼があったんです。
 なんでも目利きの企画の担当が突然止めてしまって困ってるらしいんです。
 求める条件が秋二さんにピッタリなんです。どうですか?」

秋二は飛び上がって喜んだ。
「旅行代理店で働ける!夢みたいだ」
すぐに秋二はその会社の面接に行った。
秋二が持っている企画案を提示したところ、会社の人は感心して
「君に是非来てほしい」とその場で採用を約束してくれた。

今まで不安定な派遣社員であった秋二が遂に正社員になる大チャンスを掴んだのであった。
秋二が夢のようだと祝い酒に酔っていると目の前にメッセージが現れた。

「アメノウズズノミコトです。
 私がお世話してあげたんですよ。忘れないでね」

それを見て秋二はうやうやしく頭を下げた。

「本当? そうだったんだ。
 ありがとうございます。夢のようです。恩は忘れません。
 仕事頑張ります。神社の存続運動も頑張ります」

その後も秋二は毎日ブログで神社のメッセージを伝えたり、
神社の霊験の話を大げさに書いて宣伝した。また、神社を守る人達の
運動に参加するようにもなった。神社様様という感じであった。

 それから1年が過ぎた。

 秋二は旅行代理店の社員として正式に認められて仕事に励んでいた。
ただ彼女に縁が無いことは変わらなかった。モテないタイプの彼が
正社員になった途端に彼女ができるわけもなかったのである。
それでも持前の真面目さで懸命に仕事と勉強に励んでいるのだった。
忙しさで、神社のお陰ということを忘れてしまっていて、
ブログの書き込みをほとんどしなくなっているのだった。
 それに伴い、神社の参拝者も減ってきて今では元の状態になっていた。

 一時は神社を存続させようという意見もあったが、次第にそれも
衰退して遂に商店街は神社を潰して開発することを決定した。
地元板でそれが流れたのをたまたま秋二は目にしてしまった。

「え、神社が潰されるの。
 しまった。神社の神様に恩があるのに、俺は何してたんだ」
申し訳ない気持ちになってしまった。
「神様、ごめんなさい」と繰り返し謝るのみであった。

すると久しぶりに目の前にメッセージが現れた。

「秋二さん、いいんです。始めから無理だったんです。
 あなたのせいではないです。
 私は神々の世界では立場が弱いのです。
 神の世界も力関係で動いているのです。私は負けたのです。

 それより、大変なことが迫っています。
 東京に巨大な台風が迫っています。スーパー台風です。
 今もう近づいています。
 風速90m以上の風が東京を直撃します。
 200万人が死にます。それを伝えてください。
 最初は小さな台風ですが、突如大きくなります」

と同時に目の前にビジョンが見えてきた。
神社が暴風で飛ばされて粉々になるビジョンである。

秋二は驚いた。
「なんてことだ。200万人が死ぬ?
 そんなことは信じたくない。
 でも、今まで予言が外れたことはない。
 大変だ。今すぐ伝えなければ」 

TVのニュースを付けると太平洋で台風が接近していることが
伝えられた。関東直撃する可能性もあるとのことであった。
しかし、小さな台風なので温帯低気圧に変わるかもしれないと
楽観視したコメントがされていた。

「甘い、これがスーパー台風になるんだ。90mの風で
 家も車も吹き飛ばされる。東京が壊滅する。
 逃げられる人は逃げて欲しい。
 今なら逃げることができる。被害も小さくできる」

秋二はかつてのブログにこのことを必死に訴えた。
しかし、かつてのような人気は無くなっており、
なかなかアクセスは増えない。
それにスーパー台風なんて嘘くさい話にしか聞こえない。
気象庁が「大丈夫」と言ってるのだから人々の耳には
秋二の訴えなど狂った人の妄言にしか聞こえない。
ブログで訴えたが反応は冷ややかであった。

 台風は一日、一日と近づいてきた。
しかし、小型の台風のままである。気象庁は呑気な報道しかしない。
でも、秋二の目には神社が粉々に吹き飛ばされるビジョンが連日見える。

「ダメだ。みんな信じてくれない。
 台風は突然巨大化するんだ。
 神社が粉々になるほどの風が東京を襲うんだ。
 どうしたらいいんだ。
 仕方ない。俺だけでも逃げるか?
 でも、東京以外に行くあてなんてない。
 逃げても難民になるだけだ。
 派遣の頃よりも悲惨な日々が待っているだけだ。
 僕は最後まで東京に残る」

秋二は悲嘆に暮れた。
「せっかく正社員になれたのに。神様は彼女ができるって
 言ってくれたのに。嘘だったのか?」

と嘆いているとメッセージが目の前に現れてきた。

「アメノウズズノミコトです。
 ごめんなさい。日本の神々が総出で台風を阻止しようと頑張りましたが
 阻止することはできませんでした。
 あなたにはこれ以上苦しみを与えたくないです。
 私の住む世界に来て欲しいのです。
 神社にいつも参拝してくれたやさしい秋二さんに来て欲しいのです。
 愛する秋二さんにそばに居て欲しいのです」

このメッセージを見て秋二は驚いた。

「愛する秋二さん・・ 
 もしかして・・あなたは僕のことを愛してくれていたの?
 そんなことを言われたの初めてだよ。
 初めて僕のことを好きになってくれた女性が神様だなんて
 アンビリ―バボーだよ
 うれしいな。世界中の男達に自慢したい気持ちだよ!」

秋二が感激に酔っていると女性のビジョンが見えてきた。
目の前に弥生時代の衣装のような恰好をした女性が・・
綺麗な衣装をまとった女性である。顔はきゃりーぱみゅぱみゅ 
みたいに可愛い。その女性は微笑みながら秋二に語った。

「私はアメノウズズノミコトです。
 私の住む世界に一緒に来てほしいです。
 残念ながら、秋二さんの夢はこの世では叶わないんです。
 この世は理不尽な世界です。
 秋二さんのようないい人が報われるとは限らないんです。
 神々にもこの世の理不尽さは変えられないんです。
 だから私がこちらで秋二さんの夢を叶えてあげたいんです」

秋二は神様の美しい姿を見てうっとりとした。

「ウズズノ様、あなたは美しい。
 僕の彼女ってあなただったんですね。
 是非、あなたの所に行きたいです。
 天国で一緒に旅行に行ってくれますよね?
 結婚してくれますよね? 子供を産んでくれますよね?」

アメノウズズノミコトはビジョンの中でにっこりと微笑んで
「はい」と答えた。
秋二は「はやく君と一緒になりたいよ」と狂喜した。

遂に台風が上陸する目前となった。外は暴風雨の夜である。
秋二がTVを付けると驚くべきニュースが流れていた。

「緊急警報です!
 台風は突如として勢力が拡大しています。信じられないことです。
 スーパー台風の規模となっています。フィリピンで大きな被害を
 もたらした2013年の台風30号よりも大きくなっています。
 過去に例が無いほどの勢力で関東を直撃しつつあります。
 何故、突然勢力を増したのかは気象庁でもわからないとのことです。
 政府は緊急事態であると宣言しました。
 現在、関東を脱出しようとする人で交通機関がパニックになっています。
 今から関東を脱出することは返って危険ですので控えてください」

「ほら、予言通りになった。
 もっと早く大きくなってくれれば被害は小さくできたのに」
 秋二は悔しそうに言った。

「僕は神様の所に行く」
秋二は雨具を身に着けて暴風雨の中、神社の境内に行った。
お百度参りのように何度も祈願を繰り返した。

「僕は神様の所に行く。僕はあなたが好きだ。
 あなたは僕の可愛いい彼女だ。
 楽しみだよ。きみに会えるなんて感激だ。
 あの世に行ったら僕とHしてくれるよね。
 最後に僕の仲間達、東京の人達の被害が最小限に
 なるように祈るよ。この世への最後の奉仕さ。
 僕が身代わりになるから都民を救ってほしい」

雨風は段々と強くなっていき、男は百度参りも困難になっていった。
やがて立っていられなくなり、神社の拝殿前に崩れ落ちた。

やがて夜が明けた。

空は台風一過のように晴れあがっていた。
TVはいつものようにニュースを伝えた。

「昨晩台風が関東を通過しました。
 今日の関東は台風一過の青空となっています。
 台風の被害はほとんど報告されていませんが、
 各地で竜巻が発生して被害が出ているとのことです。
 都内では神社が竜巻で全壊したとの報告が上がっています。
 神社に参拝に来ていた男性一人が死亡したとのことです」

 秋二の死のニュースを聞いたSNSの友人達は口々に彼を称えた。

「台風の被害はほとんどなかった。
 きっと秋二と神様が身代わりになってくれたんだよ。
 彼は予言でおおげさに言ってたけど、
 本当に東京で大きな被害が出る予定だったんだよ。
 それを身をもって阻止してくれたんだよ。
 秋二って本当にいい奴だったもんな。
 きっと今頃は天国で神様と幸せに過ごしているだろうね」

それから日々が過ぎた。
竜巻で大破した神社跡地は開発を進める人達の強い主張により、
神社が再建されることはなく商店街に変わってしまった。
神社のことも秋二のことも人々の記憶から消え去っていった。

SNSの仲間達だけは時々秋二のことを思い出して話題にしていた。

「ちょっと疑問なんだけど・・
 秋二はあの前日のツイートで"台風がスーパー台風に豹変した"
 "ほら予言通りになっただろ。今すぐニュースを見ろよ!"と書いていたけど・・
 そんなニュースなんて無かったよね?
 台風が突然巨大化するなんてあるわけないのに。
 彼は幻覚か何かを見ていたのだろうか?」

誰もが同じ疑問を抱いていた。

「もしかしたら、秋二は神様に騙されていたのでは?」

と思ったのだが・・

「まさか、神様が彼を道連れにした・・そんな酷いことをするわけがない」

と口にするのを打ち消すのであった。

おわり

(注)この話を怖い話と解釈するか?熱愛物語と解釈するか?は皆さん次第です。



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