本作品は2019年作です。

<帰ってきた宮魔大師>

(※新作9の続編です)

時報が鳴り、アナウンサーが2018年の始まりを伝える映像がTVに表示された。

「皆様、あけましておめでとうございます。2018年が始まりました」

これを聞いた宮魔はほっとしたような表情でつぶやいた。

「やっと年越しができた。10年掛かった。
 何で2017年を繰り返す羽目になったのだろう。
 おそらく、2018年に殺される運命を回避できるまで行をさせられたんだろう。
 この10年で随分と腕を上げることができた。もう何も怖くない」

宮魔が部屋を見回すとヒロシが眠っていた。

「おい、ヒロシ、年が明けたぞ」

と声を掛けたところヒロシが目をさました。

「年が明けたのですか?ことしは何年ですか?」
「2018年の元旦だよ」
「やった、遂に年を越せた。20年ぶりだ、宮魔さん、あなたのお陰だ」
「ちゃんとバグを修正するよう伝えたよ。創造主にね」
「創造主はどんな人だったんですか?」
「人間とそっくりだったよ。顔はよくわからなかったね」
「へえ、そうだったんですか。
 とにかく新しい年を迎えることができてうれしいです」

ヒロシは大喜びであった。

 宮魔は2017年を10回繰り返し、新しい年2018年に行くことができたのだった。
そして2018年で霊能者として仕事を再開したのである。
2017年を繰り返してる間、宮魔は修行に励み、能力を高めることに専念した。
能力を高めることで年越しが許可されると考えたからである。

 霊能者 宮魔大師(きゅうまだいし)は金を出せば何でもする霊能者である。
「何でも請け負う」という噂が広まっており、宮魔のところにはいわくつきの
お客が多く訪れるようになっていた。

 ある日、中年の女性が相談に来た。深刻な顔をしている。
宮魔が「何かお悩みですか?」と聞くと女性はおもむろに話し出した。

「私の兄、生田正司のことについてなんです。
 兄は悪い霊に憑りつかれているに違いないんです。
 別人のように変わってしまったんですから」
「ほう、どのように変わってしまったのですか?」
「兄、正司は若い頃から人気者でした。妹の私が言うのもなんですが、
 ハンサムで明るくて気さくで、どこへ行っても愛される魅力的な人なんです。
 職場でも、女性からモテモテでバレンタインデーには一杯チョコを
 もらってきました。私はそれをいつも分けてもらっていました。
 仕事もできるし、綺麗な嫁さんをもらってマイホームも立て、順風な日々を
 送っていたんです。ご近所の評判も大変良かったんです。
 ところが、ある日、車の事故を起こしてしまったんです。結構賠償金を
 支払ったようなのです。それから何かが狂ってしまったのです。
 性格が変わってしまったのです」
「どんな風に」
「嘘をつくようになったんです。職場の同僚に嘘を言ってお金を借りまくるように
 なったんです。親や妻や子供が倒れたなどと嘘を言って手当たり次第に
 借金するようになったんです。嘘がバレて職場の人達から詐欺師と呼ばれるように
 なって職場に居られなくなったんです」
「ほう・・」
「兄は嘘をついたり、騙したりするような人ではありません。
 私達は兄を追求しましたが、私達にもさえも嘘をつく有様です。
 去年、会社を辞めました。そして嫁さんとも離婚しました。
 何もかも失ってしまい、今は実家に帰っています。
 これで懲りて、もう借金をするのは止めるだろうと思ったのですが、
 まだいろんな人から金を借りまくっているのです。
 今度は同級生とか、近所の人とか。兄は人が変わってしまったんです。
 みんな怒ってます。警察に訴えると言ってる人もいます。
 このままだと兄は逮捕されてしまいます。
 家族みんなほとほと疲れてしまいました。もう地獄です」
「何故、霊が憑いたとわかるのですか?」
「そうとしか考えられません。優しい兄が詐欺師になるなんてありえません。
 霊の仕業に違いありません。心当たりがあるんです。
 事故を起こす前に友人に誘われて恐山に旅行に行ったそうなんです。
 霊なんて信じない兄でしたから、きっと恐山で無礼なことをしてしまったのです。
 もし、霊の仕業だったなら取り除いて欲しいのです」
「そうですか、分かりました。御兄さんを霊視してみます」

宮魔が霊視を始めると怪訝な顔になってつぶやいた。

「これは厄介だ。私の手に負えないかも」

それを聞いた女性は不安な表情で宮魔に問い詰めた。

「何か見えたのでしょうか?」
「うん、かなりやばいものが付いてますね。
 詐欺師の霊です。恐山に行った時に憑いたのかもしれません。
 霊がお兄さんを操って詐欺をしているのです」
「やはり、そうでしたか。兄は本当にいい人だったんです。
 非の打ちどころがないほど。そんな兄が人を騙すなんてことを
 するわけがありません。霊に操られていたんですね。やっぱり。
 霊を払って頂けるんですよね?」
「うん、でも、手ごわい霊です。もしかしたらお兄さんの身に危険が
 及ぶかもしれません。それくらい強い霊です。お兄さんをここへ
 連れてくることはできますか?」
「それは無理です。兄は霊なんて信じてません。ここには来てくれません」
「では、除霊の日取りを決めましょう。
 お兄さんは今、実家に居るんですよね?」
「そうです。両親と一緒にいます」
「では、お兄さんが自宅に確実に居る日の夜を教えてください。
 この日に遠隔で除霊をします。
 霊が抵抗するのでお兄さんは暴れるかもしれません。
 暴れたらみんなで押さえつけなければなりません。できますか?」
「はい、わかりました。私と夫、そして弟を待機させます」

そして、除霊の日がやってきた。女性は家族でたまには会食でもしようと
実家に夫や弟を呼んで、みんなで鍋を食べて過ごした。兄である正司は
お酒を飲んでうとうとし始めた。それを見た女性は正司に話しかけた。

「にいちゃん、もう寝なよ。2階の部屋に布団敷いてあげるから」
「そうか、すまないね」

正司は部屋に行き、布団に入って眠りについた。それを確認した女性は
宮魔に電話を掛けた。「今、寝ました。除霊をお願いします」と伝えた。
そして、夫や弟に準備するように言った。

「これから除霊が始まるわ。兄は暴れるかもしれない。
 暴れたら押さえつけてね」
「わかった。任せて」

しばらくすると部屋で寝ていた正司が起き出して声を上げた。

「うわー、苦しい」と喉を抑え始めた。そして立ち上がり
「痛い、苦しい、救急車を呼んでくれ」と電話の方に行こうとした。
それを見た3人は正司を抑えつけて布団に押し付けた。
「頼む、病院に連れてってくれ。喉がいたいんだ」
「兄さん、許してくれ、今、除霊をしてるんだ。我慢してくれ」
「じょ、除霊?」
「霊が取れるまでの辛抱だ。我慢してくれ」
「なに言ってんだ、放せ、苦しいんだ」

正司はもがき苦しんで大声を出した。エクソシストみたいな光景である。
1時間ほどした時、体力が無くなったように正司はぐったりとして眠ってしまった。

女性は宮魔に電話を掛けた。
「宮魔さん、兄はバタリと倒れてしまいました。眠ってるようです」
「もう大丈夫です。除霊は成功しました。もしかしたら体に障害が
 あるかもしれませんので病院に連れていってあげてください」

病院で診てもらうと喉に異常な炎症が起きてるということで入院した。
医師も首をかしげる症例だったようで「原因不明」とのことである。
正司は一週間後に退院したが、喉の炎症の後遺症で声が出なくなっていた。
医師によると「リハビリをしてみるがおそらく声はもとに戻らないだろう」とのことであった。

後日、女性は宮魔のところに報告に訪れた。
丁寧に女性はお礼の言葉を述べたのであった。

「宮魔さん、この度はありがとうございました。
 無事に霊を除いてくれたとのこと、感謝いたします。
 残念ですが、霊が暴れたせいで兄は喉に障害を負ってしまいました。
 声を出すことができなくなってしまいました。とても残念です。
 大変つらい事ですが、これで、全てが霊のせいであるとの確証を得られました。
 兄は悪くなかったんです。私ども親族は兄を許すことができます。
 被害に遭われた方々へもそれを説明して許してもらおうと思います。
 宮魔さんに助けて頂けなかったら、兄も私達もどうなっていたかわかりません。
 ありがとうございました」

とのことであった。宮魔もそれに返事を返した。

「今回の除霊は私にとっても今までにないくらいきつい仕事でした。
 霊の力が見たこともないほど強かったのですから、正直私も不安だったんです。
 どこかの国で詐欺を繰り返して処刑された人間の霊でした。
 どうしようもない悪党の霊でした。しかも、人を操る力が強力でした。
 喉に憑いてました。お兄さんの喉を操って話術を駆使していたのです。
 こんな霊に憑かれたことは本当に災難でした。
 でも、無事に払うことができてよかったです。
 あなたのお兄さんはこれで元のお兄さんに戻りますよ。
 お兄さんは詐欺なんてするような人ではないですから。
 これからやり直せばいいですよ。まだお若いんですから」

「宮魔さん、本当にありがとうございました。
 私はどこかで兄を疑っていたんです。霊が原因じゃなくて
 兄の本性なんじゃないかって?・・時に兄を憎いと思ってしまいました。
 その疑念が晴れただけでも良かったです。また家族の仲を取り戻すことができます」
「私がお役に立ててよかったです」

女性はすっきりした様子で帰っていった。
宮魔は一件落着したということで日記に記録を付け始めた。
書きながら独り言をつぶやくのであった。

「今回の件は本当にきつかった。かつての俺だったら手に負えない事案だった。
 なぜなら、霊なんていなかったから。
 原因は、あの男にあった。事故でお金が必要になった時、大げさな嘘を言って
 同僚に土下座して「助けてくれ」と頼んだのが見えた。その時、想いもよらず、
 優しい同僚がポンと80万円を貸してくれた。この時、彼は衝撃を受けてしまったんだ。

 "こんな簡単にお金を手にすることができるんだ、あくせく働くのがバカらしい"

 この時、競馬で大穴を当てた時のような快感に酔いしれたんだ。
 一生忘れられないほどの快感だったようだ。
 以降、この快感が忘れられなくなってしまった。
 人を騙して金を手に入れる快感を脳がしっかり覚えてしまったからさ。
 ギャンブル依存症と同じさ。
 
 絵に描いたようないい人がこんな簡単に詐欺師に転落してしまう現実、
 これこそが、人間の持つ恐ろしさというものだな。霊よりも怖い。
 
 解決法は一つ、呪いを掛けてこの男を喋れなくすること。
 それしかなかった。喋ることができなければもう騙すことはできない。
 この男の武器は話術だったからな。
 加えて、全てを霊の責にすることで家族との亀裂や
 被害者達の恨みを帳消しにすることができるわけだ。

 昔の俺だったら、こんな術は使えなかったな。
 この10年で俺も腕が上がったな」

おわり

(注)…実話を元にしてます。本当にこういう人がいました。



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