本作品は2016年作です。

●霊能サロン「ドロン・ドロ」 シリーズ●

<第8話 ろくでなしの父親>

 今夜も夢の中の宮殿でみさは充実した時間を過ごしていた・・

 今日のジェマの呪術の個人授業はちょっと気合いが入っていた。
ジェマはいつもよりも怖い顔をしている。

「呪術の奥義について教える。
 小さな力で大きな成果をねらう。それは武器と同じです。
 人間を狙う場合の弱点はここだよ」
 ジェマは人体を書いた図のいくつかの箇所を指して示した。
 また敵の内で重要な人物を探し出してその人の霊体を人形に繋げて
 集中的に攻撃する術なども教示してくれた。

「ここまでの話は小手先の戦術的なことだ。
 もっと戦略的な術もある。相手の運気を取り去る術があるよ。
 後日その方法を教える。意外に簡単にできるよ。
 戦ではこれが勝敗を決めることもある。
 知らない内に敵の運気を取り去っておく、それで戦況が一気に変わることがある。
 実際にトルコの軍隊はこれでモンゴルの軍隊を破ったことが何度もある」

 みさは「運気を変えてしまうなんて恐ろしい。これぞ本物の呪術だわ」と思った。

「アラブには遠い距離を移動したり、人や物を運ぶという術の伝説がある。
 聖者の伝説だけどね。
 実際にはそんな途方もない術よりも夜間に身を隠す術の方が現実的で役に立つ。
 物語みたいに昼間に透明になったりはできないけど、夜は全く見えなくなるよ」
「それよりも、空飛ぶ絨毯があるんじゃないの?」
「ははは、そんなものはお話の世界だよ。
 アフリカには雷を落として相手を倒すという術があると聞いているが」
「あるわ。でも、出来る人は滅多にいないわ。誰でもできるわけではないわ」
「でも、一度でも成功出来たらそれだけで効果がある。君にそれを実現して欲しいんだ。
 呪術は銃のように確実な武器ではないけど、
 相手に恐怖を与えることができるんだ。それが戦に勝利をもたらすことがあるんだ。
 呪術の一番有益な使い方は相手の心に強い恐怖を与えることなんだよ」
「それってテロリストみたいね?」とみさは口にしてしまった。
 するとジェマは反応した。

[テロリスト? なんだいそれは?」
「500年先の未来に登場する話よ? あなたも知っているはずよ」
「そんな未来のことを僕がわかるわけないよ」
「私は未来から来ているの、知ってるわよね?」
「なんだって・・どういうこと?」
「ええ? あなたは未来の私も守護してくれてるじゃない?」
「何の事?」

みさは混乱した。
「何で今のジェマは昔の人そのものになっているの? 
 どういうこと? 私やダギフ様はここと未来を認識しているのに
 どうして、ここのジェマやシャップは過去しか知らない人なの・・
 ここは何なの? 過去なの? ただの夢なの?・・

 ・・きっと今、過去モードになってるんだわ」
 みさはゲームの設定みたいに適宜切り替えているんだろうと納得して
 これ以上考えるのをやめた。

「ところでジェマさんは奥さんはいるの?」と聞いてみた。
「いないよ。結婚する気もないよ」
「どうして? 御両親から言われないの?」
「僕は兄弟が多く末っ子の方なんだ。両親は僕のことなんて気にもとめてないよ。
 それに僕はこんな仕事しているので誰も結婚してくれないよ。身分も捨てたしね。
 それ以前に僕は夫や父親にはなれないよ。こんな変わり者だからね」

 それを聞いてみさは心の中で思った。
「・・ここは日本じゃなかったわ。変な質問してしまったわ。

 この人って呪術で敵を倒すことしか興味が無いみたいに見えるけど、
 愛とか家庭とかには全く興味が無いのかしら? 
 この私には興味を持っていないのかしら?」

みさはジェマを誘惑しようと色目を使ってみた。
「私と今度、社交会に同行してみない?」

ジェマは驚いたようにみさを見つめた。
するとその気まずさを察したのか?シャップがやってきて、
「お妃さま、ダギフ様とのお食事の時間になりましたよ」

というといつの間には窓の外は夕焼けの景色になっていた。
みさはふと我に帰り、自分がジェマとしていた会話や行動を思い出して
自分自身に驚いた。

「私は夢の中では別の人みたい・・何もかも不思議・・夢だから?」

そして夢がさめた。
いつものように職場に出勤して待っていると、この日の最初のお客は若い女性であった。
20代のOLという感じである。
地味ではあるがしっかりした働く女性という印象である。
女性はみさに相談内容を話し出した。

「みささんですね?
 能力が高い霊能者と聞いています。
 相談があるのです。それは父親のことです。霊のことなんです。

 私は父を憎んでいます。ろくでもない父でした。
 わがままで、いつも母に暴力を振るって苦しめました。
 私を娘として可愛がってくれたこともありませんでした。
 「お前なんて生まれてこなければよかったんだ」といつも酷い言葉を浴びせました。
 給料もほとんど遊びに使ってしまって母がその分必死に働いて
 私を育ててくれました。最低の父親でしょ?」

それを聞いてみさは自分の父親のことを思い出した。

女性は怒りを抑えつつ、話をつづけた。

「私が小学生の時、父は若い女と一緒に突然どこかへ消えてしまいました。
 それから母と私はどれだけ苦労したか?
 私はどん底の子供時代を送ることになったのです。
 私は家族の団らんも楽しい家庭の思い出も、青春の思い出もありません。
 それで私は父を恨みました。

 父は消える時に置手紙すらしなかったのです。そればかりか・・
 思い出すだけで震えを感じるのが、最後に父が家に来たあの日・・

 母が病院に入院しているのに、父は若い女と一緒に遊んでいて、
 家にやってきたのよ。母の事を心配するでもなく、
 家の財産や金目のものを物色しに来たのよ。有り金全て持っていったわ。
 私には、お別れの挨拶もしなかったのよ」

と女性は涙を流して悔しそうに話をつづけた。

「あの日のあの女の言葉を忘れないわ。
 父と一緒に来た下品な女は私を見てこういったのよ
 ”これがあんたの子かい? さえない子だね。これじゃ使えねえよ”
 私を連れ去って働かせるつもりだったのかと思うと悔しくて悔しくて・」

みさはじっと彼女の話を聞いてあげた。自分と重ねる部分があるので辛かったが。

「私は父を恨みました。
 そして今まで歯を食いしばって頑張ってきました。
 幸せになって父にそれを見せつけてやると誓いました。

 去年のことです。父が死亡したと警察から連絡がありました。
 私の知らない土地で孤独死していたとのことです。
 ざまあみろと思いました。
 もちろん、遺骨は受け取りませんでした」

 ここからが相談なんです。
 それ以来、父の気配がするんです。家に父が居る感じがするんです。
 夜中にうなされるわ、具合が悪くなるわ、運勢も悪くなった気がするんです。
 一日に何度も父のことを思い出して辛い気分になるんです。

 霊感のある友人に相談したところ、やはり父の霊が見えるというのです。
 父は成仏しておらず、救いを求めているというのです。
 誰も供養してくれないので私を縋ってきたんだと思います。

 でも、私は父の霊を供養する気なんて全くありません。
 散々、母と私を苦しめておいて最後は私達に縋ってくるなんて
 あまりに勝手すぎます。

 そこで、父の霊を追い払ってほしいのです。
 地獄に落としてほしいのです」

 みさはこの女性に同情した。自分も同じ様な境遇だったからである。
でも、この女性は不幸な境遇に負けてたまるかという強さを持っている
ことが自分とは違うと尊敬の念を感じるのであった。

「この人には絶対、幸福になってもらいたい」
みさは気合いを入れて霊視してみた。

するとこの女性の背後には中年の男性の姿が見えた。
「この人が父親なのね」
男性は浮浪者のような汚い姿をしており、疲れ切ったような
感じに見えた。かなり辛い状況で最後を遂げていることがうかがえた。
顔を見ると涙を流しているのが見えた。

みさはこの霊に怒りをぶつけるように心の中で伝えた。
「この人から離れなさい。
 この人はあなたの供養なんてしないですからね!
 娘さんを捨てた癖に、救いを求めて来るなんて身勝手ですよ」

すると男はみさに向かって土下座しながら叫んだ。
顔には涙がこぼれていることが見えた。

「すまない・・すまない。
 俺のせいで妻と娘を苦しめてしまった。
 本当にすまない。本当にすまない。
 
 娘に父親として何もしてこなかった。
 ずっと後悔していたんだよ。本当にすまない。
 俺は本当にダメな父親だった。それを思うと苦しい。
 ずっと苦しかったんだよ。
 娘を不幸にしたのは全て俺なんだよ。
 許して欲しいんだ。本当にすまないと思っているんだ。

 俺は地獄に落ちてもいいんだ・・
 娘だけには幸せになって欲しい・・
 何とかしたい・・」

みさは驚いた。
救いを求めているのではなく、ずっと謝っていたのだということが分かったからである。
父親はずっと心の中では娘に対してすまないと思っていたのだ。
娘のことは本当はずっと愛していたのだ。
その思いが強かったので死んでから娘に憑いてしまっていたのだ。

みさは霊につたえた。

「あなたは酷い父親だったみたいだけど、
 それでもやはり父親だったのね。
 娘さんのことをずっと心配してくれていたのね。
 だったらどうして生きてる内に娘さんに謝らなかったの?

 あなたがそうやって娘さんに執着していると
 娘さんの足をひっぱることになるのよ」

「本当にすまない。
 謝って済むわけないよ。
 俺はダメな男だった。
 いつも誘惑に負けてしまう弱い男だった・・

 申し訳なくて・・娘のことが心配で心配で・・
 俺はどうなってもいい。俺が居る事が娘にとって
 よくないなら、地獄に落としてもいい。
 お願いだ・・娘を幸せにしてほしい・・」

それを聞いてジェマが突然現れた。

「この人を光の世界に送ってあげるよ」
 霊の執着を取り去る呪文「フナワー・ヅレ・ロンエヨーロ」
 を唱えると天から光が降ってきてこの霊を照らした。
 霊は光に向かって上がっていくのが見えた。
 ジェマはこの父親の気持ちにうたれたようで涙を流していた。

それを見たみさは意外に思った。
「ジェマさんって術や戦うことしか考えてない人だと思っていたけど
 情にもろい人だったのね。

 だったら、家族を持たせてあげるわ。王子様に命じてもらうわ。
 あ、今一瞬、夢のお妃さまになっていた(笑)」

みさは父親に関して見たことを女性に伝えようとしたところ、
シャップがすり寄ってきてテレパシーでアドバイスしてきた。

「ダメ、正直に全部伝えてはだめ。
 この人は父親への憎しみをバネに生きているのよ。
 それが生きる力なの。これからも。
 だから、父親の霊を払いのけたとだけ伝えなさい」

みさはアドバイスに従い、女性に
「お父様の霊を祓いました。もう現れません」
と伝えた。女性は
「ありがとうございます。すっきりした感じがします。
 私には父親なんて存在しなかったんです。
 もう思い出したくもないです。もう二度と近づいて欲しくないです。
 父が近づけないように護符を作ってください」

と護符を買って帰っていった。

みさは今回の件で自分の父親について思い出してしまった。
アル中で暴力を振るっていた父親のことを。

今どこで、どうしてるのかしら? みさは透視してみた。
すると額の奥のビジョンに幕が張られた。
シャップが出てきていった。
「見ない方がいい。見るとみさは会ってみたくなるし、悩んでしまうよ」
ジェマも出て来ていった。
「君のお父さんが幸せになるように術をかけてあげるよ」

その配慮がみさには不自然に感じた。
「本当はもう父は死んでいるのね。だから見ないようにしてるのね。
 みんな優しいのね。
 でも、もし、父が死んでいるなら
 どうして私のところに来てもくれないのかしら・・」

「きっと父は私に顔向けできないと思って、隠れて見守ってくれているんだわ」
と無理やり自分を納得させたのであった。

「ところでシャップ、前から聞こうと思っていたんだけど・・
 あなたはどうして猫なの?猫に生まれ変わったの?」と聞いてみた。
シャップはちょっとむっとしたような表情で答えた。
「猫なんかに生まれ変わるわけないよ。僕はちゃんと人間だよ。
 みさに仕えるためにあの場所で捨てられていたこの猫の体に入ったのさ。
 飼い主に捨てられて瀕死の状態だった猫と魂を入れ替わったのさ。
 もちろん、追い出したわけじゃないよ。元の猫さんには天国に行ってもらったよ」
「そんなことができるの?凄いわね」
「ダギフ様の時代にはよく行われていた術だよ」

つづく

※フナワー・ヅレ・ロンエヨーロ は実際に霊や生霊の執着や憎しみを取り去る効果があります。(推奨回数15回)



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