本作品は2016年作です。

●霊能サロン「ドロン・ドロ」 シリーズ●

<第6話 怪人ジェマ登場>

 みさはほとんど毎晩、夢の中でもう一つの人生を満喫していた。
夢の中でダギフ様と会って優雅な時間を過ごしただけでなく、お抱えの先生を
付けてもらって妃の為の教育をしてもらっていた。人との接し方や人間関係の機微など
今まで誰にも教えてもらえなった大切なことを学ぶことができたのである。
みさはまともに義務教育すら受けていなかったので、学ぶことは失われていた学生時代を
取り戻すような楽しみを感じ、学ぶ姿はまるで夜間高校に通っている学生のようであった。

 一番興味をそそったのが呪術の授業であった。呪術師と思われる先生が来て、
術の使い方や占いの仕方などを学ぶことができたのである。
そこで教えてもらった占いは他の占いよりもピタリと当たる優れものであった。

「ここは天国だわ。私の人生が倍に膨らんだみたい」と満足感を感じるのであった。
しかも、自分だけの秘密、まるで宝物を独り占めにしたような満足感を感じたのである。

 次第に、夢から覚めると「ああ、また現実に戻ってしまったんだわ」と
感じるようになった。同時に「どうして私だけ、こんな夢の世界に行けるのかしら?」
「どうして私は日本人なの? 前世でアフリカ人だったとしたら、どうして今日本人なの?」
「どうして ダギフ様も一緒に生まれて来てくれなかったのかしら?」
「そもそも、ここに生まれないでずっとあの世の王国に居ればずっと幸せだったのに・・」
と疑問が時々脳裏をよぎるのであったが・・
もう一つ、気になることがあった。

最近、ニュースで盛んに登場する テロ組織 IGS のことであった。このニュースが
流れる度に強いマイナスのエネルギーや悪霊が流れてくることが感じられるのである。
その度に邪気に対する抵抗力を高める呪文「メホロンテ・ノモネー・モ・ヨワメ」を唱えたのであった。

「このテロ集団の背後に悪魔が居るわ・・」みさにはそれが感じられたのである。
そしてふと恐ろしいことを考えてしまうのであった。
「ダギフ様は悪魔だって言ってたけど、もしかしてこのテロ組織の悪魔と同一なのでは・・」
次の瞬間
「そんなことあるはずはない」と無理やり打ち消すのであった。

 みさは今日も、いつものように占い部屋に就いてお客を待っていると
ある男性が相談に訪れた。男性は30代前くらいの普通のサラリーマンのようであった。
垢ぬけているというか好青年という感じである。
悩みを相談しに来るよくある男性のタイプとはちょっと違う。
男ははっきりと相談内容を口にした。

「私は会社員なんですが、もっと生き甲斐のある仕事をしたいんです」
「転職を考えているのですか? 適性を占いましょうか?」
「いや、転職というより、もっと、もっと大きな仕事がしたいんです」
「どういうお仕事ですか?」
「あなたのような霊能者になりたいんです」

みさはビックリした。霊感占い師になりたいという女性はいたが男性でこんな相談をしてきた
例はなかったからである。
みさは「もしかして、この人も何やら妄想を抱いている人なのかな?」と心の中で思った。

相談者の中には集団ストーカーに狙われている、電磁波で攻撃されているとか、
自分の部屋に宇宙人やドラゴン、天使などが居るとか、
はたまた自分は歴史の偉人の生まれ変わりだなど、
妄想と思われることを相談してくる人がたまに来るからである。

みさはおそるおそる聞いてみた。

「あの、どうして霊能者になりたいのですか?」
「簡単です。私は霊能力を使って世の中に貢献したいからです。
 私は自分の能力に自信があります。高校時代成績が学年5位以内で、
 ハンドボール部のキャプテンでした。生徒会もやってました。
 1位の推薦でこの近くの自動車メーカーの工場に入社することができました。
 将来は政治家になることも考えています。私は世の中を良くしたいんです。
 自分にはその能力があります」
「それなら、霊能者にならなくてもよいのではないですか?」
「私は神様を信じています。最近「神との会話」という本を読んで感動しました。
 私も神様の役に立ちたいんです。神様と会話したいんです。
 あなたは神様と話ができるんですよね?」
「ええ、神社に行くと神様の姿が見えることがあります。会話できることもあります」
「神社なんてそんな低級な次元じゃなくて・・私はこの全宇宙の意志という意味の神
 という存在と話をしたいんです。
 私は口だけの霊能者と違って神様の教えを実践することができます」

みさは自分のことを口だけと言われているような気分になった。
男は続けた。

「神との会話 の著者みたいに神様の声を聴くことができたら、私は絶対に
 世の中に生かしてみせます。神様の声を聴ける人になりたいんです。
 どうして神様は私のような、それに適した人間には語り掛けてくれないんでしょうかね?」

みさは困り果ててしまった。「なんと回答したらいいか・・・」
そこで霊能者の苦労を話してみることにした。

「霊能者は良いことばかりではないですよ。悪い霊が寄ってきたり、
 辛いことも多いです」

すると男はきつい目をして反論してきた。

「それは君の心が引き寄せたものなんです。
 君の世界は君の心が100%引き寄せた世界なんですよ。
 苦しみは全て、間違った考えに基づく恐れや自分を偽った考えが原因なんです。
 あなたは神が与えた自分らしさ、自分の本当の姿を偽って生きているんです。
 だから苦しみがやってくるんです。それに気づくべきです。自分の間違いに
 そして、恐れを捨てなさい。恐れが災いや苦しみの現実を作り出しているです。
 それが今世界で起きている紛争や分断の本当の原因なんです。
 一人一人が自分の考え方の間違いや愚かさに気付くことが何より大切なんです・・
 君の自分に対する間違った考えや恐れの過ちをしっかり見つめて愛に変えれば
 霊ではなく神を引き寄せることができるはずなんだよ。
 悪霊なんていないんだよ。全ての霊も神の一部だから善も悪もないんだ。
 君に悪霊が見えるならそれは君の心の反映なんだ。
 全ては自分に問題があることに気づいた方がいい」

男は説教を延々と続けた。自分の説法に酔っているように見えた。
みさはしかたないので男の説教に黙ってうなづき続けた。

するとシャップが近くにやってきてテレパシーで話をしてきた。

「やれやれ、変な人が来たね。こう言ってやりなよ。
 神様の啓示を受けた人の平均年齢は50代。仕事をやり遂げた後に
 神様は啓示をしてくださるんです。あなたも今の仕事で目標を
 成し遂げた後に神様と会話できるようになります。そのビジョンが見えますよ」
と。

みさはシャップの言う通りのことを伝えると男は納得したようであった。

「そうだね。神との会話にも本物の能力者はごく普通の人の中にこそいると書いてある。
 純粋な心を持った普通の人こそが本当の能力者で神そのものなのだと・・
 そういう心の修行を達成した後でやっと神と会話できるということなんだね。
 私はまだまだ修行中で、時が来ていないだけだったんだね」
などと自己完結して帰っていった。

みさはほっとした。

「なんでしょうね。今の人?」
とシャップに聞くとシャップが答えてくれた。
「スピリチュアル本に影響された人だよ。本を読んだだけで自分が
 偉大になったと勘違いしている人達だよ。
 そういう錯覚を抱いてしまう人も中にはいるということさ。

 彼らの主張はこうさ・・
 神は全ての場所に存在する。今のままで完全で幸福であるなどと綺麗事を
 言いながら、自分だけ神に近づこうとか、特別な人になろうとしたり、
 理想の恋人を引きよせて今よりも幸せになろうとしていたりする。

 全ての人は神であり同じなどと言いながら、スピリチャル本を読んでる自分達は
 魂のレベルが高い「気づきを得て目覚めた人」などと自己陶酔している。
 まあ、本を読んだだけで悟りを開いて特別な人間になった気分になれる。
 本を読んでない人達を「無知な人達」と見下して、優越感に浸れる。
 そういうコンビニ商品に酔っぱらっているだけ。
 今は、悟りまでお金で簡単に買える時代なんだよ」

「でも、あの人の言うことで、もっともだと思うこともあったわ。
 どうして私のような教養も能力も無い人間に霊能力があるのかしら?
 あの人みたいに優れた人に霊能力があった方が世の中に役に立つのに」

「みさ、甘いよ。その考え。よく考えてごらん。
 ああいう自分に酔っている人が特別な能力や神仏と会話を手にしたらどうなると思う?
 自分が特別な選ばれた人間だと舞い上がってしまうよ。
 教祖みたいに人の上に立って威張ろうとするよ。
 そんな人を神仏が信用してメッセージを託すわけがないんだよ。
 人間は必ず堕落してしまう生き物だからね。
 もし、宝くじで何億円も突然手にしたらほとんどの人は堕落してしまうだろ?
 人間なんて、そんなものなんだ。
 神仏は、どん底に落ちて絶望と恐れを味わって無になった人
 でないと信用しないんだよ」
「私がそういう人ということなのね・・」
「そうよ。みさは苦労をしてきた上に心が素直なのよ。人と競争する気も
 名声を手にする気もないよ。そういうことが重要なの。
 まあ、霊能力は先祖の行為や遺伝ということも関係あるけどね」
「そう言ってもらえるとうれしいわ。こんな私でも価値があるのね。
 考えてみると不思議だわ。どうして私は霊能者として今の時代に居るのかしら?
 何故、日本に生まれてきたのかしら?」
「きっと、今夜、ダギフ様が教えてくださるよ」

 その夜、呪文を唱えて眠るとみさはいつもの王国の宮殿に居た。
ダギフ様がいつものように迎えてくれた。みさはダギフ様に質問してみた。

「どうして私は日本に肉体を持っているのでしょうか?
 ずっとここに居た方が幸せなのに」
「お前は日本でやらなければならない仕事があるのだ」
「一体、どんな仕事なんでしょうか?」
「日本で霊能者として働くことが仕事だよ」
「それだけでは、よくわかりません」
「では、それについて順番に学んでいくことにしよう。
 君が500年前に経験したことを再び体験して思い出すのだよ」
「今日は、新しい呪術の先生が来る。この人は今までの先生とは違う。
 アラブ世界で名を馳せた呪術師だよ」
「それは凄い人のようですね。でも何故呪術なんでしょうか?」
「説明しよう。500年ほど前、この国は平和に暮らしていたが突如として
 野蛮な人達が我々に襲い掛かってきたのだ。スペイン人やポルトガル人である。
 彼らはアフリカの各地を支配し、人をさらうことまで行ったのだ。
 さらって家畜のように売買したのだ。
 彼らは北アフリカを支配していたオスマントルコとは全然違う。
 我々アフリカの人間を人間とは思っていないようだ。極悪非道だ」
「私は歴史のことはよくわかりません。奴隷貿易のことは聞いたことがありますが」
「武力では彼らに勝つことはできない。そこで呪術を使うことにしたのだ。
 お前は稀代の呪術師の血を引いている。それで国を守るのだ。
 その仲間と言うべき男を今日は連れてきた。ジェマという男だ。
 さあ、入ってきたまえ。ジェマ」

すると一人の男が入ってきた。イスラムの衣装を着た黒人の男であった。
「はじめまして。お妃様、私がジェマです」
ごく普通の痩せ型の男という感じであった。職人風で何かに没頭するような
タイプに見えた。眼つきはちょっと怖いものがあった。闘志を燃やした
剣士のような感じである。
ジェマは自己紹介した。

「私はアラブ世界で呪術の仕事をずっとしてきました。得意技は
 言葉の力を扱う事と、自分の分身を使うことです。火や水を使う術もあります。
 そして呪術で戦いをすることが大好きです。負けたことはありません」
「イスラム教徒ですか?イスラム教徒はきびしい信仰をしていると聞いていますが」
「私は礼拝も教えも興味はありません。コーランの言葉の持つ力で
 術を行うことに興味がありますが書いてある内容に興味はありません。
 宗教の教えなんてどれも同じですよ」
「どの宗教も元は同じ教えということですか?」
「いや、どうでもいいということです。私は術・力しか信じてません。
 また私は大勢の神や霊を使いますよ。ブードゥーと同じです。
 サソリの神様が大勢私を守っています」

と言うと本当にサソリの姿をした怪物のような霊体が大勢、部屋を
埋め尽くすのが見えたので恐れを感じてしまった。「怪人・・」と思った。
みさはジェマに核心をつく質問をしてみた。

「あなたは侵略者を倒すことができるのですか?」
「できると思います。義は我々にあります。ただ不安なことがあります」
「それは、なんでしょうか?」
「呪術師の間の噂なんですがスペイン人の中に恐ろしい力を持った呪術師が
 いるというのです。それがどうも遠い東の国ジパングからきた呪術師らしい。
 ノブナガという人がスペインに遣わせた呪術集団「オンミョウジ・・」とか・・
 それがスペイン人の味方をしているらしい。
 私の勘の虫がそれに反応するんですよね。経験したことのない強敵かもしれないと」

みさはジェマという呪術オタクみたいなこの男に不思議な親近感を感じたが、
同時に自分自身が同レベルで会話していることにも驚いたのであった。
そして「ジパング、ノブナガ」という言葉から日本とのつながりを感じたのであった。

このジェマはこの先、みさの前世及びそれ以降、深くかかわることになることを
この時は想像することさえできなかったのであった。

つづく

※ メホロンテ・ノモネー・モ・ヨワメの呪文は邪気に対する抵抗力を高める効果が実際にあります。(推奨回数14回)



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