本作品は2016年作です。

●霊能サロン「ドロン・ドロ」 シリーズ●

<第3話 ジェラシー>

 占い会社の社長と出会ってから、みさは正式に霊能者としてデビューすることになった。

 WEBに広告を出してもらったし、地元のデパートの最上階の占い部屋コーナーの
一室にみさの部屋を設置してもらうことができたのである。

 みさはここで霊的なことが得意な占い師という看板を掲げたのであった。
サロンにはシャップもいつも一緒に来ていた。
みさはシャップに「職場に来なくてもいいよ。キバが守護しているから」
と言ったがシャップは「俺もみさの世話役だから行く」と言ってきかない。
どうやらキバに嫉妬しているらしい。シャップにもプライドがあるらしい。
しきりに「俺」と言うようになったのである。

「ねえ、シャップ、どうして俺なんて言うの? メスなのに?」と聞くと
「俺は男だよ」とすねのであった。
「でも、メス猫じゃない?」と答えるとむっとして
「体はメスでも俺は男なんだよ」と答えるのだった。
「変なの?」とみさは思った。

 同じ階には恋愛占いを得意とするタロット占い師なども居て若い女性で賑わっていたが、
みさの霊能サロン「ドロン・ドロ」は雰囲気からして怪しい為か、いわくつきのお客ばかりが
訪れて来るのであった。

 ある日、若い女性が相談に訪れた。一瞬、目が点になるような美人であった。
ファッションモデルみたいに整った顔、スタイル。
こんな田舎町を歩いていたら目立ってしまう感じである。

 彼女はおもむろに相談内容を語り始めた。
「私はこの近くの港で通訳をしている者なの。とても悩んでいることがあるの。
 実は・・霊がたまにやって来て私の体を触ることがあるの。
 気にしないようにしてたんだけど、最近特に酷いの。毎晩なの。
 怖いし、不安だし。寝不足になるの。
 あなた、霊感あるんでしょ? 霊が見える?」
「ええ、見えますよ。黒っぽい霊ですね。よく言う色情霊です」
「よかった。信じてくれるのね」とほっとした表情になった。
「周りの人は信じてくれなかったんですか?」
「そうなの。欲求不満の妄想だとか、幻覚だとか誰も信じてくれないの。
 一番ショックだったのはヒーラーよ。霊なんていない。妄想だ。
 あなたの心の醜さが原因とか、ボロクソ言われたわ。
 本当にヒーラーなのかしら。結局解決もしてくれなかったし」
「そのヒーラーって女性でしょ?きっと、あなたの美貌に嫉妬したんだと思います」
「あら、そんなことないわよ」
「あなたは魅力的だから男の霊が寄ってくるだけだと思います。
 一人強い色情霊があなたの寝室にいます。近づかないようにしてあげましょう」

 みさは狼の霊であるキバに退治を命じた。
「キバ、この人につきまとっている霊に痛い想いをさせなさい」

 するとキバは相談者の女性の自宅に飛んで行き、そこに居座っている男の霊に飛びかかった。
 霊は恐れおののいて部屋を出ていったが、キバは追っかけて首にかぶりついた。
 その様子を霊視していたみさは更に命令した。
「二度と女性にいたずらしないように頭と腕をもぎとってやりなさい」
 キバは命令通り、男の霊にかみつき、首と腕をもぎ取った。
 霊は断末魔の悲鳴を上げて苦しんだ。
 その様子は、さながらホラー映画のようであった。

「これで大丈夫。また来たら電話してね。
 二度と霊が近づかないようにするおまじないを教えてあげます。
 "978,784,897,789,58" この数字を紙に書いてお守りとして持ち歩いてください」
 女性はすっきりしたようで、満足して帰っていった。

 その後シャップがみさにささやいた。
「嘘を言うのがうまくなったね」
「そうね。彼女を霊視した時、何人か男の色情霊が見えたけど、
 それ以上の数の男の霊が守っていたの。だから色情霊なんて払う必要もなかったわ。
 男の人って死んでも美人に群がるのね。煩悩は死んでも治らないってことね」
「男がみんなそんな馬鹿というわけじゃないよ。俺は違うよ」
「シャップ、また男を気取ってるの? メスなのに」
 シャップはむっとした表情をしながらも会話を続けた。
「あの女性を襲っていた霊は色情霊なんかじゃなかったね。
 正体を見た時はびっくりした」
「そうね。強い力を持った霊だったわ。恨みだとわかったわ。
 キバが襲ったら化けの皮が剥がれて本当の姿が現れたわね。
 女性のヒーラーだったわ。生霊よ。お客として来た彼女に嫉妬したのでしょうね。
 キバに噛まれて当人は今頃寝込んでるわ。女って恐ろしいわ。
 彼女に渡した数字 "978,784,897,789,58" は嫉妬から身を護る数字なのよ」
「そんな数字を作り出すとは、実力アップしたね」

 続いて男性が相談に訪れた。20代のサラリーマン風の男性であるが
 この人もなかなかのイケメンである。長身でスマート、端正な顔立ちをしている。
 その上、スポーツ選手のようなさわやかさと明るさが感じられる人であった。
「あのう、相談したいのですが。恋愛なんです」とみさに話しかけた。
 みさは未だ10代だし、年上の男性、しかも恋愛経験が豊富そうな人の相談などちょっとできないと感じた。
「失礼ですが、私より他の部屋の占い師さんの方がよいお答えができると思うのですが・・」
 と答えると男性は
「いや、普通の恋愛相談ではないんです。霊が絡んでると思うんです」
「どんなお悩みでしょうか?」
「実は、私この年になっても彼女がいたことがないんです。
 女性の友達はたくさんいて誘ってくださる女性もいるのですがいつも・・
 喧嘩になってしまうんです。最初のデートで必ずトラブルが起きたり、
 喧嘩したり・・そんな感じで1回目で終わってしまうんです。
 好きな人ができても私がアタックしようとするとその人が寝込んだり・・
 もう、怖くて恋愛できなくなりました」

みさはこんなに感じのよい男性が恋愛できないということに驚いた。

 男性は話をつづけた。
「まあ、私が仕事人間だからかもしれないですけどね。
 仕事は充実してます。もうすぐ昇進の話も来ています。
 ですからそろそろ結婚をしたいと思ってます。
 職場に佑香さんという女性が居て交際したいと思ってるんですが・
 また失敗するんじゃないか?と心配で。
 もしかして霊が憑いて邪魔しているのでしょうか? 見てください」
「わかりました。見てみます」

とみさが霊視してみた。しかし、邪魔をしている霊など感じられない。
むしろ、この人を光の存在が守護しているのが見える。
みさには恋愛を邪魔する原因が全く分からなかった。
そこでダギフ様に伺いを立てることにした。
「ダギフ様、この人はどうして恋愛がうまくいかないのでしょうか?」

するとダギフの光が脳裏に浮かんで声が聞こえてきた。

「この者を邪魔しているのは霊ではない。守護神である。
 この者の先祖はこの地方の湖の地主であった。そこの神社の
 天織姫(あまおりひめ)を代々大切にしていたのである。
 この者を守護している神はこの天織姫である。その為この者は
 全般的に幸運の持ち主であるが、なにせこの神様が女性なので
 この者がデートでいちゃいちゃするのが面白くない。
 そこでいつも邪魔をしてしまうのである」

みさはびっくりした。
「そんな、神様が嫉妬して恋愛を邪魔する、そんなことがあるのですか?」
「神様にもいろいろ個性があってね・・まあ、そういうこともあるのだ」
「ではどうしたらいいのでしょう?」
「私から説得してみる。この神様は佑香さんのことは気に入ってるようだ。
 妻にしてもよいと考えているようだ。
 でも、いざデートしている場面を見ると感情が入ってしまうらしい。
 そこで1年間、この神様にこの男から離れてもらうことにする。交渉しておく。
 おまえはこの男に神様が干渉できないようにバリアを張っておきなさい。
 有効期限1年間のバリアだ」
「わかりました。そうします」

みさは原因を男性に話して、1年だけ女神の干渉を排除するのでその間に
佑香さんと縁を結びなさいと勧めた。
そして女神がこの男性に干渉できないようにバリアを張る儀式を行った。

「マノゼェー・ドロンドロ マノゼェー・ドロンドロ マノゼェー・ドロンドロ」

呪文を唱えて男性に術を施した。

「これで大丈夫よ。1年の間に佑香さんと縁結びしてくださいね。神様との約束ですよ」
男性は納得して帰っていった。

 夕方になりみさはどっと疲れた表情で帰り支度をしていた。
美女に群がる男の霊、嫉妬する女、嫉妬する女神・・
人間の業の深さにショックを受けていたのである。

また、いろんな人を鑑定してみると自分とは全く違う人生を送っている人達に
も遭遇する。時に嫉妬に近い感情を抱いてしまうこともある。
特に恵まれた子供時代を過ごした人に対して
「どうして同じ人間なのにこんなに自分とは違うの」
「私は子供の頃から楽しい思い出などない。青春の思い出もない。
 なのにこの人はずっと楽しい思いをしてきた・・どうして人生はこんなに不公平なの?」
などと思ってしまうこともあった。
自分が惨めに感じて涙がこぼれることもあった。また、そんな事を考えてしまう自分が情けない。
霊能者に向いてないのでは?思うこともあった。

この日、占い会社の社長の有子が占い部屋を訪れてきているようだった。
各部屋の占い師と雑談しているのが聞こえた。
「あ、社長さんが来たんだわ、挨拶しなきゃ」と思った。
有子は最後にみさの部屋に訪れた。するとやさしく声を掛けた。
「今日は疲れたみたいね」
「いえ、そんなことはありません」
「嘘つかなくてもいいの。長年占いをやってると顔みただけで考えが分かるのよ
 今日は一緒に食事しない? おいしいお店がこの近くにあるのよ。
 おいしいワインも御馳走するわよ」

みさは心の中で思った「私未だ未成年なんですけど・・」
すると有子は
「大丈夫、もう19歳なんだからお酒飲んだってどうってことないわよ」
と反応したので、みさは驚いた。
「有子さんは私の心の中を読み取ることができるの?」

 その夜、みさは有子さんと食事をしながら楽しい時間を過ごした。
有子の人生経験に溢れた話に励まされて霊能者としての自信を取り戻したのであった。

「自分の能力が人の役に立つ。私を大事にしてくれる人が居る。
 そして見守ってくださる大いなる存在がいる」
みさは自分の居る場所をやっと見つけることができたと感じたのであった。

 それから1年が経ち、みさはすっかり仕事にも慣れて霊能者としての貫禄もついてきていた。
今日はどんなお客が来るかしらと待っていると男性が訪れた。
一度会ったことがあると直観した。

「そうだ、1年前に来た女神に恋愛を邪魔されている男性だ」と思い出した。
しかし、1年前とは雰囲気が違う。サラリーマン風ではなく髪型も服装も
ちょっとキザな感じであった。高級ブランドのスーツや時計をしている。

男はちょっと疲れた様子で話しかけた。
「1年前にあなたに相談した者です。あれから全てが変わりました。
 デートで邪魔されることはなくなりました。お陰様で人生が変わりました」
「よかったですね。佑香さんとはうまくいってますか?」
「それが・・邪魔されてはいないんですが、彼女とは別れました。
 合わなかったです」
「そう、残念ですね。ところで今日は何かお悩みでも?」
「1年前に守護神様を離してもらいました。その後・・仕事がうまくいかないんです。
 失敗ばかりするし、上司とうまくいかなくなるし・・今仕事を休んでる状態です。
 このままじゃクビになりそうです。何でこんなに物事がうまくいかないのかな?という感じです。
 もう一度守護神様をくっつけて欲しいんです」
「わかったわ。やってみます」

みさはこの男性を霊視してみた。するととんでもない映像が・・
この男性は女神の干渉が無くなった途端に次々と複数の女性に手を出していたのである。
クールな男だけにどこへ行っても美人に誘惑される。それで佑香さんのことなど
すっかり忘れて女に手を出してしまったようである。それが見えたのである。

みさは天織姫様に意識を繋げてみた。
「神様、以前のようにこの男性を守護してください」と伝えてみた。
すると「こんな汚らわしい男は嫌い」と伝わってきた。

みさは男にちょっとむっとした表情で霊視の結果を伝えた。
「あなた、どうして佑香さんのことを切り捨てたの?
 佑香さんと結ばれなさいと言ったでしょ?
 どうして他の女に目移りしたのよ。
 残念ながら、女神様はもうあなたのことを嫌いになったようよ。
 諦めてください。今日は料金は要らないです」

男はショックを受けたように言った
「え、もうかつてのように守護はしてくれないんですか?
 だったら初めからここに来なければよかった」

それを聞いてみさは感情的になって答えてた。
「あなたが約束を破ったから悪いんです。
 プレイボーイになれたんだからそれで満足しなさい」

みさは心の中で強い怒りを感じた。
「まったく、男ってどうしようもない生き物ね」

つづく

※ 97878489778958の数字は嫉妬されないようにする効果が実際にあります。推奨個数10個



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