本作品は2017年作です。

<アブダクション>

 霊能者 宮魔大師(きゅうまだいし)は金を出せば何でもする霊能者である。
「何でも請け負う」という噂が広まっており、宮魔のところにはいわくつきの
お客が多く訪れるようになっていた。

 ある日のこと、宮魔のところに派手な格好をした中年の女性が訪れてきた。
一目で芸能関係かマスコミ関係の人だと感じさせる雰囲気が漂っていた。
女性は宮魔に相談を持ち掛けた。

「はじめまして、私は宮地セラと申します。作家をしています。
 かつてはアナウンサーでした」
「どこかでお会いしたような気がしました。
 そういえば、以前TVによく出演されていましたね。
 世界中を巡って取材をされていましたね。
 美人で勇敢なレポーターでカッコよかったですね。
 今でも変わらずお綺麗ですね。お会いできるとは光栄です」
「ありがとうございます。今はもう衰えてしまいましたわ。
 ひっそりと雑誌のコラムなどを書いてる程度です。
 ところで相談なのですが、実をいいますと・・

 私アブダクションされたみたいなんです」
「え? アブダクション?
 もしかして、宇宙人に誘拐されて検査をされたとかいうアレですか・・」
「そうなんです。私は宇宙人に誘拐されたような気がするんです」
「まさか・・ 
 何でそう思うんですか?聞かせてください」
「ひと月ほど前の夜のことなんですが、窓の外に光が見えたんです。
 外を見ると庭に上から強い光が差していたんです。
 何だろう? と思って庭に出てみたんです。すると空に
 大きな光が浮かんでいるんです。まぶしくて何も分からなくなるほど。
 そこまでは覚えているんですがその後の記憶が無いんです。
 目が覚めた時には部屋のソファーで寝ていました。
 窓は開けっぱなしでした。
 これは世に言うアブダクションではないか?と」
「夢でも見ていたのではないですか?」
「私もそう思ったのですが、
 その日からおかしなことが起きました。
 謎の男達が訪問するようになったのです。
 私が宇宙人と交信しているとか、宇宙人の子供を妊娠したとか
 訳の分からないことを言ってくるのです。
 私は男達を追い払いました。
 でも、その後も度々家に来るのです。
 彼らはメンインブラックかもしれません」
「メンインブラック? ああ、映画などに出てくる謎の男達ですね。
 宇宙人を目撃した人を口止めする仕事をしている人ですね?
 都市伝説ですよ。そんなの」
「何かの間違いだと信じたいのですが、何故か胸騒ぎがするんです。
 消された記憶を思い出す退行催眠を受けようかとも思いましたが
 怖いんです。もし、本当にアブダクションだったら・・
 もし、本当に宇宙人の子供を妊娠していたらと思うと・・
 催眠を受ける前にあなたに霊視してほしいんです」
「宮地さん、あなた程の方がどうしてそんな戯言を信じているんですか。
 アブダクションなんてあるわけではないですよ」
「私もそうは思っていますが念の為にあなたに見てもらいたいんです」
「わかりました。見てみます」

宮魔はしばらく女性の霊視をした。
すると様々なことが見えてきたのだった。

「そういうことだったのか?」とうなづいた。

それを見た女性が宮魔に問いかけた。
「何かわかりましたでしょうか?」
「宮地さん、あなたが見た光はUFOの光ではありません。
 あなたを守護する神様のような存在です。あなたを守っている存在です」
「ということは、アブダクションされたわけではないということですか?」
「そうですよ。あなたは誘拐などされていませんし、検査などされていません。
 そんなことあるわけないですよ」
「では消えた記憶は何だったのですか?」
「宮地さん、これはあなたへの警告ですよ。
 光が消した記憶はあの日の夜の出来事なんかじゃないです。
 あなたの過ちを全て消したのです」
「どういうことですか?よくわかりません」
「あなたは覚えていないようですね。
 あなたはあの夜、重大な決断をしたのです」
「何を言ってるのですか? 
 私が何を決断したというのですか?」
「記憶を消されてしまったのですね。
 知らない方がいいかもしれませんね」
「そんなことを言われてしまったら気になります。教えてください」
「いいですか? あなたはショックを受けるかもしれませんよ。
 アブダクションほどのショックではないですが・・」
「じらさないで言ってください」
「では、はっきり言いますよ。
 あなたはUFOで商売している業者との契約を結ぼうとしていたのです。
 あの夜、その決断をしたのです。契約を結ぶ決断です」
「UFO業者? どんな契約を結ぼうとしたのですか?」
「宇宙人に拉致されて宇宙人の子供を妊娠したという話を演出する契約です」
「ええ、そんな契約を私が・・嘘ですよ」
「いや、あなたはそれを受けようとしたんです。
 ちょっと失礼な言い方になりますが許してくださいね。
 あなたはかつて人々の憧れ、注目の的だった。それが今ではほとんど注目されなくなった。
 もう一度注目される快感を味わいたくなってUFO業者の誘惑に乗ったのです」
「そんな馬鹿なことを私が・・」
「人間なら誰でもそういう誘惑に駆られるものですよ。特に有名人や高い地位に
 居た人はそういう誘惑に駆られるものです。
 UFO業者というのは、人気が下がった有名人や引退した権威ある人などに
 ”もう一度注目を集めてみませんか”ともっともらしいネタを提供しているんです。
 有名人や権威ある人が宇宙人に会ったとか軍が宇宙人を隠している
 などと言えば信憑性が高まるわけです。だから至れりつくせりにその人に合った
 シナリオを吹き込むわけです。あなたの場合もそれですよ。
 元アナウンサーが宇宙人の子供を妊娠したという話を語れば一躍注目を
 集めることができる。その誘惑に駆られたのですよ」
「そんな愚かな・・」
「何か心当りがあるはずですよ」
「・・宮魔さんには正直に打ち明けます。
 確かに思い当たることはあります。
 かつてはファンが追っかけするほどの人気だったのに歳をとったらめっきり
 誰も関心をもってくれなくなりました。辛かったです。
 あの頃のように再び注目を集めたいと思うことはありました。
 いや、正直に言えば何をしてでもいいからもう一度スポットライトを浴びたいと
 思うことがありました。注目される快感を忘れられないんです」
「UFO業者は人の弱みをうまく利用しているんです。
 あなたのように元スターだった人、死ぬ前に世間をあっと言わせたいと思ってるお年寄り、
 売れないタレントなど、弱みをもった人を狙っているんですよ。
 そういう人達を使ってUFOブームを仕掛けることで業者は儲けるわけです。
 彼らは、世界各国で順番にブームを仕掛けていますよ。
 海外に居た時にそれに気づきました。
 日本で流行った同じネタを焼きまわしているなあと」
「それは私も感じています。矛盾だらけですよね」
「そうです。宇宙人の子供を妊娠したという話がたくさんありますが、
 宇宙人と人間が交配するはずがありません。
 地球上の同じ哺乳類でさえ種が違えば交配などしません。
 まして違う世界の全く異なる生物同志で生殖器だけが合致するなんてありえない話です。
 宇宙人とのハーフなんて人々の願望、ファンタジーに過ぎません。
 アブダクションの話もここ数十年で突然湧いてきた話です。
 何故突然こんな現象がはじまったのでしょうか?
 宇宙人は何十年も同じ検査ばかりして何を調べているというのでしょうか?
 TVの影響による妄想と考えるのが自然ですよ。
 霊能者の私でも宇宙人なんて見た事はありませんよ」
「そうですよね。どう考えても嘘ですよね。
 嘘と分かっていながらそれを演じる契約を結ぼうとしたんですね。
 私はやっぱり愚かな女だったんですね」
「そんなことはないですよ。
 あなたのようなスターだった方なら誰でも誘惑に駆られてしまいますよ。
 見えない存在はあなたを誘惑から守ってくれたんです。
 未だやるべきことがあると伝えているように感じます。
 だからあなたの過ちの記憶を消し去ったんです」
「そうだったのですか・・うれしいです。
 光は私に何を求めているのでしょうか?」
「あなたに求めていることは正統なジャーナリズムですよ。
 かつてあなたは危険を顧みず、世界の現状を伝えるために走り回っていました。
 それは正義感・使命感からだったはずです。
 もう一度、それをやってほしいと伝えているように感じます。
 今のあなたは作家として世の中の現状を告発できる立場にあります。
 自らの名声の為ではなく、真実を世の中に伝える活動をしてほしいということです」
「ありがとうございます。その通りだと思います。
 私は何か勘違いしていました。
 年老いて美貌が衰えたから世間は私を見捨てたのだと恨みを抱いてました。
 世間を見返してやろうと考えていました。
 それは間違っていたということですね」
「そうです。
 あなたがかつてアナウンサーとして脚光を浴びたのは美人だったからではありません。
 あなたの意志を応援する存在が居たからなんですよ。
 その光こそがあの夜あなたを照らした光なんです。
 人の成功は見えない世界によるものなんです。見えない力が働いてるからこそ
 人の努力は報われたりするわけです。
 成功した人はそれを「自分の資質による」と勘違いしやすいものです。
 そのおごりが失敗の原因になりやすいんです。
 逆に言うと見えない存在を裏切らない限り成功することができるのです。
 あなたは見えない存在が期待している立派な仕事をすればいいです。
 必ず、再び脚光を浴びることができますよ」
「宮魔さん、素晴らしい言葉をありがとうございます。
 今日はあなたにお会いしてよかったです。
 生き方を変えてみます。ありがとうございます。
 最後に私につきまとった男達についてですが、業者なんでしょうか?
 私に危害を加えるでしょうか?」
「心配要りません。UFO業者です。
 あなたは未だ契約もしてません。無視していれば諦めますよ」

女性はすっきりしたという表情で帰宅していった。
その夜、宮魔はくつろぎながら、今日来た女性について考えを巡らせた。

「彼女を守護した神様はどんな神様なのかな・・見たことないな・・
 記憶を消すなんて相当凄い力を持っている。
 私もその力にあやかりたいなあ」

そう思っていると窓が突然ライトを浴びたように光った。
「な、何だ、この光は?」
宮魔はその光に意識を向けて接触を試みた。
すると宮魔は強い光とエネルギーに包まれるのを感じたのであった。
そして視界が真っ白になってきた。

「なんだこりゃ・・凄い力だ・・今までに経験がないほどだ・・
 どこかの国の神仏か? 霊か?・・」
と思っている内に意識が無くなってしまった。

目が覚めると朝であった。宮魔は部屋に寝転んで寝ていたことに気づいた。
「あれ、何だったのかな?
 昨日、光を見たというところまでは覚えているんだが・・」

更に、何故か昨日のことが思い出せない。
「昨日、有名な人が来客して・・それで光を見ようとした気がするのだが・・
 何故か思い出せない。
 なんでだろう。何で思い出せないのか? 頭がボケたかな?」

宮魔は来客台帳を開いてみた。すると昨日の欄には
「元アナウンサーの相談、アブダクション・・」とメモ書きされていた。
「元アナウンサーって誰だ?
 アブダクション? 宇宙人? そんな相談があったのか?」

何だかもやもやしながらも朝の支度を始めた。
TVを付けるとニュースで不思議な話題が報じられていた。

「昨晩、謎の光る物体が多数の人に目撃されました。
 警察に多数の通報が寄せられています。
 現在のところ、光の原因は分かっていません。
 いわゆるUFOではないか?という声が上がっています」

宮魔はUFOの目撃が地元であったことに驚いた。

「あれ、俺の地元じゃないか?
 しかも、目撃された時刻は丁度俺が光を見た頃じゃないか?
 ということはあの光はUFOだったのだろうか?
 一体昨日何があったのだろうか?

 元アナウンサーの相談が関係しているような気がするが、
 どんな相談だったのだろうか?何で思い出せないんだ?
 もしかして、俺はアブダクションされたのだろうか?
 記憶を消されてしまったのだろうか? まさか、そんな馬鹿な」

宮魔がいくら思い出そうとしても昨日のことを思い出すことはできなかった。

おわり



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