本作品は2020年作です。

<村おこし>

第一章 故郷への想い

 岸田は都内に住むサラリーマンである。もうすぐ定年を迎える歳である。
子供はもう社会人になって家を出ており、家のローンも返済が済んでいる。
これからのセカンドライフはどんなことをしようかと考える日々を送って過ごしている。
そんなある日、通勤電車の広告モニタのニュースに気になることが表示された。

「〇〇県の来灯山(きとやま)村の村長が「核のごみ」(高レベル放射性廃棄物)の
 最終処分場選定の文献調査を受け入れると表明しました。全国で5か所目です・・」

 岸田はこのニュースを聞いて、衝撃を受けた。

「俺の故郷、来灯山(きとやま)村が原発のごみ処理場に・・
 故郷はそんなにすさんでいたのか。ショックだ。
 あの綺麗な故郷が廃棄物施設になるかもしれないなんて・・
 なぜだ、かつては世界中から注目された村だったのに。
 それがどうして?・・」

 岸田の心は動揺し、ショックを隠せなかった。
通勤中、ずっと故郷に想いを馳せ、茫然としてしまった。
故郷の思い出が次々と脳裏を巡ってくる。
特に、あの栄光の頃の事が思い出される。
自分がまだ若かったあの頃のことである。

 来灯山(きとやま)村は、山の麓に位置する村であり、産業は農業だけである。
特に価値の高い産物もないため、以前から過疎化が進行しており人口が減りつつあった。
そこで生まれ育った岸田は、村で飲食店を営んでいたが、人口が減るにつれてお客も減り、
経営が段々と厳しい状況になって行くのを目の当たりにしていた。

「こんなに美しい山や自然に恵まれた村が消えつつあるなんて
 寂しい限りである。ここは昔から神様が宿る場所だったのに・・」

この村には不思議な伝説があった。言い伝えによれば昔から山に空から光が降臨してくる
というものであった。村の人達はこの光を神様として崇拝していたというのである。
だから、来灯山(きとやま)村という地名なのだという。

 その頃、岸田は毎日の日課として行っていることが一つだけあった。
それは、早朝裏山の神社に出かけて「今日も商売が繁盛しますように」
と手を合わせることである。祖父の代からの習慣である。
「どうか村を助けてください。このままでは村は消えてしまいます」と
必死に祈るようになっていたのも覚えている。

 ある日、岸田がいつものように祈っていると、何か体にビビッと感じるものがあった。
するとその直後、空に光る物体が3つほど出現したのである。
「ゆ、UFO?」と驚いたのだが、不思議と怖いとは思わなかった。
そればかりか、「これは神様の使いに違いない」と感じて親しみを感じるのだった。
UFOは岸田の上空で岸田を見つめるようにしばらく停止していた。
そして岸田にテレパシーのようなものが伝わってきて脳に響いた。

「村を守ってあげるから、村を助けてあげるから、
 心配しなくていいよ」

というメッセージだったのを覚えている。
その声はどことなく祖父の声のようにも感じたのだった。

その日から不思議なことが続けておきた。
村の周辺でUFOの目撃が多発したのである。
当時、世の中はオカルトブームであり、TVなどでもUFOの特集が頻繁に放送される
という時代である。
村で頻繁にUFOが目撃されるようになったことで全国、いや世界中からUFOマニアや
研究家が訪れるようになったのである。岸田の店への来店者も増えた。
岸田の店の料理がおいしいとTVや雑誌で取り上げてくれる人もおり、店は繁盛した。

この状況を受けて、村の有志達が集まり「この村にUFO施設を作ろう」という話が湧き出した。
世界のUFO情報を集めたUFO博物館を作り、UFO情報を発信するというものであった。
つまり、UFOを利用した村おこし計画である。

話はとんとん拍子に進み、県の補助もあり、それは現実化した。
村の唯一の駅の近くに博物館が作られ、UFO観測ツアーも企画された。
不思議なことにUFOツアーの時には必ずUFOが出現してくれて、観光客を喜ばせた。
それが雑誌などに掲載されて、人気のツアーとなっていった。
岸田も有志の一人として村おこしに参加しており、岸田は「UFO様々」と神様を
拝むようにUFOに手を合わせていたのを覚えている。
もっとも充実していた頃の楽しい思い出である。

「あの頃は本当に良かった。
 村おこしが成功してみんな希望に燃えていたな〜」

しかし、良いことはいつまでも続かなかった。
あの忌まわしきオウム事件が起きて世の中は一気にオカルトを否定するような風潮になっていったのである。
オカルトを信じる人間は危険であるという雰囲気が広まり、オカルトをつぶす運動が
起きるようになったのである。
当然UFOも学者や教育者などが否定するようになり、UFOブームは一気に下火になってしまった。
その上、村役場の人がUFO団体と結託して横領や詐欺などをしていたことが発覚して、
「やっぱりUFOなんて嘘だったんだ」という印象が広まってしまった。
その結果、この村おこしはあっけなく途切れてしまったのである。
その後、村に来てくれる人は激減し、岸田の店も経営が厳しくなってしまった。
生まれて来る子供の将来を考えて、苦渋の選択で店を畳み、上京することにしたのだった。

「あれから、村はますます過疎が進んでしまっていったのか。
 遂には消滅の危機か? 悲しいなあ。
 もう一度村おこしができないものだろうか?」

そんなことを考え、悲嘆にくれる岸田であった。

第二章 UFOブーム再び

コロナ禍がようやく収まってきた頃、世界中でUFO出現が相次ぐようになった。
度々ニュースにもなることがあり、NASAや航空会社もUFOの存在を認めるようになってきて、
再び世界中でUFOブームが起きるようになった。
日本では来灯山村でUFO目撃が多発しており、再び村がUFOの聖地として脚光を浴びるようになった。

 そんなある日、都内でUFO研究家が集まり、会合が行われた。
UFO研究家で学会のような組織を作ろうという試みだった。

司会者は集まった研究家を前に話し合いを始めた。

「皆様にお集まり頂いた理由はUFO研究家の皆さんが団結して
 情報を共有し、一体となってUFOの研究をする組織を作るためです。
 まずは皆さんにUFOについての考えを一人づつ発表して頂きたいです。
 UFOの正体は何か?出現する目的はなにか?
 についての研究成果を一言、お願いします」
「私はUFOの正体は当然宇宙人の乗り物と考えています。とくにグレイですね。
 アブダクション、目撃談が世界中で多発しており、その証拠の数は膨大です。
 ゆるぎない事実です」
「いや、私は金星人だと考えています。金星は人が住めるんです。
 私も証拠をもってますよ」
「なにおとぎ話を言ってるんだよ。UFOの正体は米国やロシアの秘密兵器です。
 TR-3Bの目撃が米軍基地周辺で多発しているんですよ。間違いないです。
 宇宙人なんてばかばかしい」
「米国やロシアにUFOが作れますかね? ブラウン運動みたいな飛行をする
 乗り物を作る技術なんてこの地球にはありませんよ。宇宙人以外にありえないですよ」
「あのさ、もし、宇宙人だとして・・・何でコソコソ出現してるんですかね?
 私の説は未来人だと考えています。タイムマシンで来ているんですよ
 過去に干渉できないからコソコソしてるわけなんだよ」
「いや、地底人だと私は確信している。地底には都市があるんです」
「ナチスの残党がUFOを飛ばしてるという説の方が現実的です。
 ナチスが既に円盤型の飛行技術を開発していたという証言はたくさんあるんですよ。
 ナチスはどこかに潜んでいて再び世界征服するチャンスを待っているんです。」
「あんたら、そんな漫画みたいな話信じてるの?未来人?地底都市?ナチス?ガキかいな?
 知的な異星人が古代から地球の歴史に関与していると考えた方が現実的かつ合理的ですよ。
 彼らは密かに米国やロシアと密約を結んで世界を動かしてるんですよ。
 MJ-12のことを知らないの? 機密文章は本物だってことが証明されてるんだよ」
「あんなの政府の意図的発表だよ。
 宇宙人にかこつけて軍事費の予算を確保するのが狙いさ」
「UFOの情報はみんなねつ造だってこと?
 それでもUFO研究家ですか?」
「そうだよ。そんな話もう古いんだよ。
 あんた、昭和のTV番組のネタを今でも信じてるの?
 あきれるね」
「おい、我々UFO研究家を侮辱するつもりか?
 もっと素直に考えるべきだよ。
 宇宙人が地球に訪れているというのが一番正当な説だろ。
 宇宙人目撃やアブダクション、宇宙人の子供を妊娠した女性など
 もう隠しきれないほどの証言があるんだし、疑いようがないよ」
「妄想か、虚言だと思います」
「なんだと、お前は俺に喧嘩売ってるんか?
 お前の説はなんだよ」
「私は長年UFOの情報を集めてきました。そしてある結論に至りました。
 それは、UFOは我々が抱いた仮説の通り出現するということです。
 量子論で観測者が抱いた仮説通りに量子が振舞うのと似ています。
 UFOは、我々が意識すればするほど、それに合うように振舞う存在です。
 ということは意識が作りだした幻影ではないか?と考えています。
 量子論で説明できる仮説です」
「また、変なことを言うやつが出てきたな?
 じゃあ、UFOを研究しても意味ないってことか?
 我々は幻影に振り回されているバカモノってことかい?
 お前はUFO研究家じゃない。ここにいるべきじゃないよ。
 さっさと帰れ!」
「まあ、まあ落ち着いて、私もそれに近いことを考えているんですよ。
 もちろん、私は宇宙人説を唱えていますよ。宇宙人の仕業には違いないんですが、
 我々をからかっているのはないか?と思っています。
 歴史的に見ても、出現の仕方、UFOの外観、宇宙人の姿などは我々の時代や
 イメージに従って変化してきています。
 これは我々のイメージに合うように演出していることを示しています。
 そして、ブームになるとその地域で目撃が増えます。つまり、UFOは意図的に
 注目を集める演出をしているんです。」
「何のために?」
「わかりません。おそらく地球人の世論を操作するためではないかと・・」
「だから、さっき言っただろう。
 大国と手を組んで世界の人達を洗脳してるんだよ」
「また、動画サイトの陰謀論みたいなことを。
 これだから金儲け目的の研究家はいやだね。
 宇宙人は地球人を研究したり、実験したりしてるだけなの。
 よく考えてください。例をあげます。
 もし、我々が近くに生命がある星を発見したとします。
 そこに原始人みたいのがいたとします。そしたらどうしますか?
 侵略したり、支配することは、世論が許さないでしょう。
 では放置しますか? しないですよね?
 接触したい、実験してみたい、観察したいと思うでしょう。
 議論の結果、危害を加えない範囲でパフォーマンスするだけなら
 許可されるでしょう。宇宙人も同じだと思いますよ。
 研究者は、原始人の反応を研究したいと思うはずですし、
 彼らにパフォーマンスを見せたい、驚かせたい、怖がらせたい、
 あるいは楽しませたい と思う人もいるでしょう。
 注目を集めるには、原始人の想像や興味に合わせて演じるのが一番です。
 それが結論ですよ。演出して楽しんでるんですよ。
 もしかしたらどっきりカメラみたいなTV番組を作ってるのかもしれない」
「UFOの主は愉快犯だというのか?
 それでは読者は納得しない。
 そんな説を本にして買ってくれるというのか?」
「あなたは本を売るためにUFO研究をしていたんですか?」
「お前だって生活のためにUFOを研究してるんだろうが?
 そんな愉快犯説を唱えたら、UFOの文化に水を差すことになる。
 UFOビジネスが冷え込んでしまう。大勢の人がUFOで食ってるんだぞ」
「ビジネスは別にしても、UFOは人々のロマンなんです。
 SFやアニメで表現されてきましたよね?
 近年ではスピリチュアルの題材にもなっています。
 人々の期待に応えるためにもUFOはロマンチックな存在であるべきです」
「いや、UFOは侵略者であるべきだ。
 世界を陰であやつる闇の勢力、これが一番面白いんだよ。
 読者はこういう陰謀論が大好きなのさ」
「おい、あんたら、本気で研究する気があるのかよ!
 我々はアニメやサブカルのクリエーターじゃない。
 科学者だぞ」
「科学者だって?こんな訳のわからない説ばっかでどこが科学なんだよ
 俺はお前らとは一緒に研究なんてできないな」
「俺もそうだよ。バカと一緒に学会なんかつくれるか!」
「言ったな。お前こそがバカだろ! おい、表にでろ!」
「ああ、もうだめだな。
 UFO研究の組織を作るなんてできないな!」

「これでは・・・組織を作ることは無理ですね。
 残念ですが、会の結成の話は無かったことにします」

第三章 村おこし再び

 UFOブームが起きて数年後、ある村でUFO博物館がオープンした。
その村とは、、UFO出現が相次ぐ来灯山村である。
コロナ禍が収まり、これから再び景気がよくなるという機運だったためか?
明るいニュースのようにマスコミに報道された。
レポーターが博物館の館長にインタビューをする様子がTVで放映された。

「こちらが今月オープンしたUFO博物館の館長の岸田さんです。
 いろいろとお聞きしますのでよろしくお願いします」
「岸田です。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「岸田さんは東京から来られたとお聞きしましたが」
「そうです。一昨年まで東京で食品卸売りの会社に勤めておりました。
 定年退職をしてこちらに移住しました。私はもともとこの土地の
 出身でして、20代までここに住んでいたんですよ。
 ここは故郷なんです」
「そうでしたか?
 UFO博物館を始めた理由というか、動機をお聞かせください」
「実は、昔もこの場所にUFO博物館があったんですよ。
 昔からここはUFOが訪れる場所だったんです」
「ほお、昔からそうだったのですか? なぜでしょうか?」
「私の考えなんですが、ここに聳えるあの山ですが、UFOの動力源と
 なるエネルギーがあるのだと思うのです。
 ここはエネルギー補給地なんだと思います。
 この山は古くから来灯山と呼ばれていたんです。光がやってくる山という意味です」
「それは凄いですね。
 エネルギーとは磁場ですかね?それともマグマですかね?」
「わからないです。
 まだ我々の科学では解明されていないエネルギーだと思います。
 それがもし解明できたら、我々もUFOを作ることができると思うのです。
 そればかりか発電にも使えるかもしれません」
「はあ、夢がありますね」
「実は、この山で栽培された果物や野菜はとても美味しいと
 評判を頂いています。
 きっと未知のエネルギーのおかげだと思うんです。
 ここはいわゆるパワースポットなんですよ。
 ここで農家を志す若い人達を募集しています。
 もっと農地を広げる予定ですので希望される方は見に来て頂きたいです。
 山の登山道も整備しました。初心者でも登れるコースもありますよ。
 温泉施設も出来ました。エネルギー豊かな温泉と郷土料理を是非堪能してください。
 UFOに興味がある皆さんに、是非ここに来て頂きたいと思ってます」
「この山は宝の山というわけですね?」
「そうなんです。我々人類の未来の夢がここにはあるんです。
 夢を実現したいと思い、私はここで館長を務めさせていただいております」
「岸田さんはUFOの正体は何だとお考えですか?」
「やはり宇宙人だと思いますね。我々が心を開くのを待っているのだと思います。
 でも、地底人や未来人だという人もいますね。その可能性もまだあります。
 やはり、UFOは未確認飛行物体なんです。正体はまだ未確認なんですよ」

岸田はレポーターの取材が終わった後、ほくそ笑んでいた。

「うまくいった。村おこしはうまくいっている。
 UFOのお陰だ。UFOで村おこしが成功したわけだ。
 今度こそ、村を復活させてやるさ。俺の故郷だものな。
 村おこしは俺の生きがいだ。最高のセカンドライフさ。

 何故UFOが来るのか?なんて毎度聞かれるけど、
 研究家が言ってる説はどれも私には納得できない。
 彼らの正体は我々の想像すら及ばないものに思えてくる。
 ひょっとしたら宇宙人ではないかもしれない。
 
 何でもいいんだ。ただ一つ言えることは・・
 彼らは我々の村おこしに協力してくれたということだ。
 我々が望む通りの姿を演出して望む通りに振舞ってくれる。
 
 彼らには何か目的があるのかもしれない。
 その目的が我々の村おこしとマッチングしたのかもしれない。
 または我々を助けたいと思って協力してくれているだけかもしれない。
 もしかしたら、パフォーマンスで楽しんでるだけかもしれない。
 いずれにせよ、この村は彼らのお陰で救われた。
 彼らの正体が何であってもいいんだ。
 彼らは我々村民の神様であり、友人である。
 感謝するのみだ」 

すると外で騒ぎの声が聞こえた。
「UFOだ」と言ってる声が聞こえる。
窓を開けると取材陣が空に向かって叫んでいる。
空に目を向けるとそこにUFOがはっきりと出現しているのが見えた。
しかも、いろんな形のUFOが同時に出現している。金星から来たとされるアダムスキー型、
タイムマシンとされる卵型、地球製と言われる三角型、その他、様々な形のUFOがずらり。
取材陣はうれしそうにカメラを向けている。
UFOは岸田が視線を向けた時、それに呼応するかのように停止した。
岸田はUFOに向かって叫んだ。

「ありがとう、UFO達よ、友人達よ、
 ありがとう、この村を救ってくれて」

取材陣はカメラにしっかりと撮影することができた。
撮影が終わるまでUFOはしっかりとパフォーマンスをし、
撮影が終わると、さっと消えた。
このUFO達の正体が一体何者なのかは誰も知らない。
でも、彼らがこの村を愛してくれている存在であることだけは確かであると
岸田は感じて、嬉しかった。

おわり

(注)…神秘現象は人間の頭では理解しがたいものである。





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