本作品は2016年作です。

●宮魔大師 シリーズ●

<第1話 お客様の依頼は何でもお聞きします>

 霊能者 宮魔大師(きゅうまだいし)は金を出せば何でもする霊能者として有名であった。
呪い・縁切りは元より表にではできない霊障の供養も請け負っていた。
「お客様の依頼は何でもお聞きします」「お客様の秘密は絶対に厳守します」
がモットーであった。

 ある日、宮魔の元に男が訪れた。時男であった。
霊能者に相談するのにはふさわしくないセレブという感じの男であった。
時男は宮魔に相談をもちかけた。

時男:「宮魔大師さん、相談があるのです。実は霊に悩まされていまして」
宮魔:「わかりますよ。女性の霊が夜な夜な化けて出てくるんですね?」
時男:「え、凄いですね。その通りなんです。怖くて夜も眠れないんです」
宮魔:「あなたが殺したんですね?」

時男はうろたえながら答えた

時男:「殺したんじゃないんですよ。自殺したんですよ」

宮魔にはこの男がヤクザを使って自殺に見せかけて殺したことがすぐにわかった。

時男:「実は付き合っていた女性なんです。でも悪い女なんです。
    私が老舗菓子メーカーの跡継ぎだと分かって近づいてきたんです。
    一方的に結婚を迫ってきたんです。
    私は断ったんです。そしたら自殺してしまったんです。
    一度は愛した女性ですから毎日供養をしていました。
    なのに逆恨みで化けて出てくるんです。勝手な女です」

宮魔にはこの男の言ってることが全て嘘であることがわかった。
身勝手な理由で女を処分しただけであることが全てわかったのである。

宮魔:「わかりました。霊を鎮めましょう。でも、もう一人女性の霊が見えますが」

時男はふたたびあわてふためいてしまった。

時男:「そ、そうですか・・見えますか? 実は彼女の友人の友恵という人です。
    この女も悪い女で私のことを脅迫してきたんです。御曹司の私が女を自殺に追いやったと
    週刊誌にネタをばらすと・・ それで・・穏便に治めようとヤクザに仲介を依頼したら・・
    ちょっともめて・・彼女は死んでしまったんです。殺す気はなかったんです。事故なんです」

宮魔にはこれも嘘であることがわかった。友人の自殺に疑問を抱いた友恵を口止めした
ことが宮魔にはわかった。

宮魔:「それで死体はどうしたんです。埋めたんですか? 死体を埋めた場所に
    行って供養しないと成仏させることはできません。化けて出ている霊はこの女性の方ですよ」
時男:「死体の場所を教えろと? あなた秘密は守ってくれますよね?」
宮魔:「私は秘密厳守です。今までもずっとそうでした。信用してください。
    と言っても信用してくれてないようですね。昨日からヤクザが見張っています。
    もし、私が依頼を断ったら消すつもりですね。
    私は未だ死にたくないですから・・あなたを裏切るなんてできないですよ」
時男:「け、消すなんて・・そんなつもりはないです。ではあなたを信用します。
    霊を成仏させてくれますか? 気が変になりそうです。
    こんな状態じゃ会社を継ぐこともできません。何でこんなことに。
    あんな下衆どもに手を出してしまった私が悪いんですがねえ」

宮魔はそれを聞いて一瞬頭に血が登った。「今、なんていった! 下衆どもだと!」

時男:「す、すいません。気にしないでください。私もすまないことしたとは思っているんですよ」
宮魔:「わかりました。霊を供養します。その代わりあなたは店を継いで世の中の為に
    尽くして罪を償うのです。あなたの会社は今人気のスイーツのチェーン店ではありませんか?
    店を繁盛させて、もっと良い商品を開発して女性達を幸せにするのです。そうすれば
    罪は消えてあなたも幸せになれます。先ずは社長の座を継ぐこと。そして
    会社の事業を拡大すること、人々に幸せを振りまくこと。それを約束してください。
    いいですか? 怠けてはいけません。償いをしないと全てが無に帰します」
時男:「もちろんです。よろしくお願いします。これから死体を埋めた場所に案内します」

宮魔は死体が埋められた場所に行き、祈りを捧げた。彼女からは強い恨みが感じられたが
宮魔の術によって次第に沈静化していった。

宮魔:「時男さん、もう大丈夫です。霊は納得してくれました。その代わり、心を入れ替えて
    世の中に尽くすことが条件です。それをしなかったらまた復活してきますよ」

しばらくして、時男がお礼を言いにきた。
「宮魔さん、あの日以来ピッタリと霊が出なくなりました。体調もよくなりました。
 凄い力です。ありがとうございます」

宮魔:「霊は成仏しました。でも、あなたが許されたわけではないです。罪を償わなければなりません」
時男:「何をしたらいいのでしょうか?」
宮魔:「あなたは世の中に幸せを振りまくのが使命なんです。
    先ず、あなたにふさわしい縁結びをしてあげますよ。
    あなたとアナウンサー圭子さんと縁を結んであげましょう」
時男:「あの美人アナですか? 確かに圭子アナなら社長夫人にはふさわしいですが・・
    あんな有名な人と結ばれるなんて無理ですよ」
宮魔:「あんたはイケメンだし、会社は急上昇株です。自信を持ってください。
    私も援助しますよ。私の力を信じてください。
    今度圭子アナがあなたの店を取材に来ます。その時がチャンスです」
時男:「本当ですか? それはうれしいですね。あんな人がカミさんになってくれたら
    会社のイメージが良くなります。でも本当に成功するんですか?」
宮魔:「私の力を信じてください。あなたの為でもあり、霊のためでもあるんです。あなたが
    心を入れ替えて世の中の為に貢献する姿を見たら許すと言ってるんです。
    ただし、成功したら報酬を出してくださいね。供養に当てるので、ちょっと高いですが」
時男:「もちろんです。彼女と結婚できたら、それくらい何てことないです」
宮魔:「それよりも社長に就任しなさいよ。あなたが躊躇っているだけでしょ。善は急げです」

やがて宮魔が言う通り圭子アナが取材に来た。時男はこの機会に彼女に近づくことに成功した。
そしてとんとん拍子に結婚まで話が進んだ。会社の経営も順調に進み、時男の社長就任も決まった。
結婚式は盛大に行われた。美人アナと有望株の会社社長との縁談はマスコミに大々的に取り上げられた。
時男は幸福の絶頂を迎えた。

時男はこの成功で宮魔を信頼して通うようになった。宮魔の言う通りにすると全てがうまくいくからである。

時男:「宮魔さん、あなたは凄い力の持ち主です。感謝します」
宮魔:「安心してはいけません。もっと世の中に尽くしなさい。早く子供を作りなさい。
    それから事業を拡大しなさい。親族にもっと投資するように指示しなさい。マスコミにもっと出なさい」
時男:「そんなに強気で大丈夫ですかね?」
宮魔:「私を信じなさい。あなたがもっと成功するビジョンが見えますよ。今年からはバブルみたいに地価が上がりますよ。
    どんどん不動産、店舗に投資をしなさい。強気で事業拡大しなさい」
時男:「私のような罪人が幸せになっていんですかね?」
宮魔:「逆です。罪があるからもっと償いに励みなさいと言ってるんです。ビジネスに励むことも善徳なんです。
    そして私に報酬をたんまりとくださいよ。成功したらでいいですから」
時男:「それが目当てですね。あなたもやり手ですね。あなたの言うことはいつも当たるので信用しますよ」

その後も時男の会社は躍進を続けた。会社のチェーン店は全国に拡大していき、妻の力もありマスコミにも
頻繁に登場するようになった。時男とその親族は時の人となったのである。
時男に子供ができてこれまたマスコミを賑わすネタとなった。

 ある日のことである。時男がまた宮魔に相談に訪れた。しかし、宮魔の部屋は閉鎖されていた。
「おかしいな、突然いなくなった、何も連絡がなかったなあ、まあいいか? もうあの人がいなくても」

 後日、想いも寄らない事態が時男を襲った。
警察が時男の家に訪れたのである。

「時男さん、殺人容疑で逮捕します。署まで来てください」

突然時男が逮捕されたのである。
「どういうことですか?」時男は警察に問いただした。
「じつは、匿名で死体を発見したと通報がありましてね。何でも散歩してて犬がしきりに掘れ掘れと騒ぐので
 掘ってみたら死体が出たらしいです。死体の身元を突き止めて調査しました。
 友恵という人です。あなた知ってますよね?
 実行犯のヤクザも逮捕しました。あなたからの依頼だと吐きましたよ」

時男は突然のことで閉口してしまった。
「死体のことは宮魔しか知らないはずだ、通報したのはあいつだ!
 どうして?・・お客の秘密は厳守と言ってたのに・・」

 この逮捕は大スキャンダルとなった。ワイドショー、雑誌の格好のネタになった。
美人アナと結婚したイケメン社長の成功物語が一転しておぞましい殺人事件へ・・
まるでドラマのような展開は多くの人の関心を集めた。
あまりに酷い事件のスキャンダルによって一気にチェーン店の業績が悪化して店舗は次々閉鎖。
無理な投資をしたので負債を抱えて老舗は倒産に追い込まれた。
親族も時の人から一気に後ろ指を刺されるはめに陥ってしまった。その上破産、借金地獄・・
親族は時男を恨んだ。父親も怒り狂ってマスコミに訴えた。

「時男め、先祖から受け継いだ老舗をつぶしやがった。あんな男は絶縁だ。死刑にしてほしい!」

妻からも離婚請求をされる始末となった。
親からも妻からも見捨てられた時男は一気に奈落の底に落されることになった。

 その頃、宮魔は空港に居た。空港の待ち時間で瞑想にふけっていた。
そして一人事を喋っていた。

「友恵さん、
 あんたの無念は晴らしましたよ。
 あんたは何もしていないのに口止めの為に消された。
 悔しかったでしょうね。

 あなたは私に依頼をしてきたお客さんです。

 私は「お客様の依頼は何でも聞きます」がモットーですからあなたの依頼に答えました。
 そうそう、もう一つモットーがあります。

 「先に依頼した方を優先させます」

 あの男よりも先にあんたが依頼してきましたね。
 あの男が先だったら男の要望を叶えましたよ。
 でも、あの男が来たのは、あなたが仕組んだことだったんでしょうけど・・

 あなたの力ならあの男を呪い殺すことができたはずです。
 でもそれでは腹が治まらない。
 そこで一族全員に復讐することを私に依頼した。
 あなたは恐ろしい人だ、いや霊だ。

 お蔭さまで私もまとまった金が手に入りました。ヤクザに捕まる前に海外に逃げます。
 修行に行きたいと思っていたので丁度良いことです」

おわり

(注)恨みの霊の謀略ほど恐ろしいものはない。



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