本作品は「不思議なストーリー」というページに掲載していた小説の一部です。(1997年頃作成)

<かさ地蔵>

昔々のこと、ある山道に六人の地蔵がおりました。
 ある年の暮れの日のことです。雪がさんさんと降っていました。
雪は六地蔵の頭にも積もり始めていました。
そこへ、近くの村のかさ売りのおじいさんが通りかかりました。
おじいさんは、六地蔵の前を通りかかると、いつものようにおじぎをしました。
そして、六地蔵の雪を払いました。おじいさんは少しためらいましたが、
売り物であるかさを六地蔵にかぶせました。
おじいさんは売りに行くのをあきらめ、家に戻ってゆきました。

 おじいさんが去った後、六地蔵は話し合いました。
「今のおじいさんは何と心の暖かい人なんだろう。せっかくの売り物を我々に捧げるとは..。」
「あのおじいさんは近くの村の正直なおじいさんだよ。
いつも正直すぎて損をしている人だよ。おばあさんと二人暮らしだけど、とても貧しいみたいだよ」
「ひょっとして、我々にかさを捧げたことで、正月の餅も買えなくなってしまったかもしれないな」
「あんな、暖かい人には正月はうんとご馳走してあげたいな・・」
「そうだ、かさの恩返しをしてやらないか」
「それはいい。お米、お餅、お魚、ついでに小判もたんまりと持っていってあげよう」

 六地蔵は、おじいさんに恩返しをすることで合意しました。
そして、地蔵の一人が掛け声をかけました。

「よし、決まった。さっそく庄屋の倉から奪ってこよう。」

おわり

注・・奇跡でお金が得られた場合、その分誰かが損をしているのである。



<偉大なる奇跡>

 ある教会での出来事。
そこの教会では、毎週日曜日の午後2時からコーラスの練習が行われていた。
15人のコーラス部員は全員まじめで、2時の集合に遅刻したりする者は一人もいなかった。
 ある日曜日のこと、大変なことが起こった。
そこの教会のボイラーが爆発して教会に大変な被害をもたらしたのだ。
しかも、その爆発は午後2時ちょっと過ぎに起きたのだ。
しかし、この時、教会には誰もいなかった。誰もけがをした者はいなかった。
何とその日に限って15人のコーラス部員全員が遅刻していたのだ。
ある者は、その日に限って腹痛がして行けなくなった。
ある者はその日に限ってコーラスのことをすっかり忘れてしまった。
ある者は、車で行こうとしたがエンジンがかからなかった。
全員が同様にその日に限って行くことができなかった。

 この出来事は教会関係者のみならず、地元、マスコミで大騒ぎになった。
「神の守護だ」「奇跡だ」「偶然の一致だ」と大論争が巻き起った。
 マスコミの報道によってこの教会に訪れる人が急増した。
また、神に目覚め教会に通う人も増えた。
15人のコーラス部員も神様に命を救って頂いたと感謝し、一層まじめに奉仕するようになった。

 しばらくして、爆発の原因は、事故の前日にボイラーを整備した技師がガスの栓をきちんと閉めていなかったことであるとわかった。
消防署は事実を調査する為、この技師を呼び出し、詳しい事情を問いただした。
事故原因を聞いた技師はこう言った。

「私は長い間、この仕事をしているが、こんなミスをしたことは一度もない。
この日に限って私はどうかしてたのだろう。」

おわり

(注)宗教で起きる奇跡の多くは信者の集合意識の演出ではないだろうか?



<幽体離脱交流>

12世紀アラブのある国でのこと、ある村に孤独な老婆がいた。
老婆は体が衰え、寝たきりの生活を送っていた。
村での話題はもっぱら十字軍のことであった。
当時、この村に伝わってくる情報は、十字軍の残虐非道な行いが主であった。
「十字軍は、悪魔の軍団だ。
聖地奪還の名目を掲げてるが、侵略と略奪が目的なんだ。
我々は決して奴等に屈してはならない。」
村人は口々に十字軍の悪口を言っていた。

 老婆の夫は十字軍との戦いに駆り出され帰らぬ人となった。
彼女のたった一人の息子イブウトも聖地の警護に志願して行ってしまった。
この老婆は一人寂しく暮らしていた。
老婆の唯一の楽しみは、息子イブウトの事を考え、神に祈ることであった。
老婆は自分が若い頃行なった様にイブウトが幽体離脱して訪問してくれることを祈っていた。

ある日老婆の前に霊体だけのイブウトが現れた。
優しく笑みを浮かべながら語りかけた。
「お母さん、いつもすまない。
お母さんを残してゆくのは辛かった。
でも十字軍のやつらが許せなかったんだ。
やつらはまたいつ来るかわからないんだ。
やつらはイーサー(イエス)の信仰者じゃない。外道だ。
我々はイーサーが処刑された聖地を汚してなどいない。
なのに奴等はいきなり攻めて来て我々の同胞を殺し、聖域を犯した。
我々ムスリム(イスラム教徒)は同胞を命にかけて守らなければならないんだ。
母さん僕は元気だからね。」
「おお、イブウトよ、来てくれたんだね。
お前はやっぱり私の子だね。
私が昔出来たことが出来るんだね。
お前は本当に信仰深いんだね。
お前は私の誇りだよ。
私のことは心配いらないよ、村人はとても親切なんだから。
体に気をつけるんだよ」
イブウトは片言の会話を交わすとすっと消えた。
イブウトは以降時々霊体で訪問した。
いつも決まって明け方、老婆が目を覚ますと目の前に息子が現れたのであった。

イブウトの訪問が始まってから1年程過ぎた頃であった。
老婆は自分の容体が悪化してきているのを感じた。
もう長い命ではないことを感じた。
老婆は死ぬ時は息子に側に居てもらいたいと強く思うようになった。
ある日、イブウトが現れた時のことである。老婆はイブウトに話しかけた。
「愛する息子イブウトよ、最後のお願いだ、
私が死ぬときだけでも、側にいておくれ。
私はもうすぐ死んでしまうよ。」
イブウトはこれを聞くとすっと消えてしまった。

数日後、イブウトは老婆の前に現れた。
「お母さん、死なないでくれ。
僕は今すぐ村に帰るよ待っていてくれ。
皆わかってくれたんだ。
だから村に着くまで絶対元気でいてくれ。」
しかし老婆の容体は日に日に悪化の一途をたどっていった。
イブウトは毎日のように悲痛な顔で現れ、着くまで元気でいてくれと語った。
イブウトは懸命に村に向かったが、村まではあまりに距離があった。
イブウトは絶望と悲しみの姿で現れるようになっていた。

  ある日、老婆の容体は極めて悪化していた。
老婆はもう自分が死ぬのを覚悟した。
 その時、ぼんやりとイブウトの姿が浮かんだ。
老婆は最後の力を振り絞りイブウトに最後の別れを語った。
「愛する息子よ。
私はもうだめだよ。いつもありがとうね。
最後に打ち明けるけど、あなたがイブウトでないことは知っていたのよ。
イブウトは聖地に行ったんじゃないのよ。
私を見捨てて出ていったのよ。
信仰心のかけらも無い子だったわ。悪い仲間と一緒に出ていったのよ。
噂では処刑されたらしいわ。数十年も昔の事よ。
あなたは一体誰なの?
どうして私を慰めてくれたの。
何の得にもならないこんな老婆を。

あなたの演技は完璧だったわ。
でも、一つだけ誤りがあったわ。
私たちはイーサー(イエス)自身が処刑されたとは信じてないのよ。
(※イスラム教ではイエスは処刑されておらず、弟が身代わりになったとされている)
あなたは異教徒なのね。でもそんなこといいのよ。

最後にあなたの本当の姿を見たいわ。きっとやさしい人なのね。
あなたが本当の姿で来てくれる事をずっと待っていたのよ。
今までありがとう。楽しかったわ。愛する息子よ。」

やがて老婆は静かに息を引き取った。
その後、息子が村に来ることはもちろんなかった。

おわり

注・・人間は寝ている間に幽体離脱していると言われる。
優しいあなたはその間に誰かを助けているかもしれない。



<前世リーディング>

霊能者 江戸川 啓史(えどがわ けいし)はトランス状態で相談者の病気の原因や治療法、
紛失物のありか、ビジネス上のアドバイスなどを的確にしゃべることで有名であった。
その透視の正確さは大変な評判であった。
最近は前世について関心を寄せる人が多くなり、この相談が多くなった。
これも評判になり、彼は前世リーディング能力者として有名になっていた。
彼には弟子が一人いた。弟子の名前は宇互井 多賀留(うたがい たがる)であった。
たがるは啓史の能力にあこがれ修行をしていた。
たがるは啓史の治療に関するリーディングに特に関心を持っていたが最近啓史が
前世リーディング ばかり宣伝し、治療に関してやりたがらなくなったことや、
リーディング料金を10万円に釣りあげたことに疑いをもっていた。

ある日、たがるは啓史に日頃疑問に思っていることをぶつけた。
たがる「先生、どうして最近は前世リーディングばかり行うのですか?
治療リーディングはもうしないのですか?」

啓史「今は時代が変わったのだよ。人々は心のいやし、魂のいやしを求めているのだ。
病気直しよりその人に前世とこの人生の使命を教える方が求められているのだ。
人生を正しい方に導いているのだ。」

たがる「私は前世リーディングなんて占いにしか思えません。
10万円も取るのはどうかと思 いますが。」

啓史「前世を知る方法はリーディングをおいて他にはないのだ。
10万円でも安いん じゃないか。」

たがる「実を言うと今までに行われた前世リーディングの内容を整理しているんですけど、 ちょっと疑問が・・」

啓史「何だ、言ってみろ。」
たがる「今まで500人程前世を見ましたよね。のべ2000人の過去生が出てきました。
驚くことにその90%以上が歴史上の有名人もしくは歴史上の有名な出来事と直接関わっています。
30%が有名人そのものです。」

啓史「何がおかしいんだ。ウチに来る人は霊的に目覚めた人が多いんだ。
各時代で活躍した 魂なんだ。」

たがる「相談者はほとんど前世を聞いて納得して帰って行きますよね。」

啓史「リーディングが正しい証拠だよ。」

たがる「そうじゃなくて、相談者の願望というか期待が、
先生のリーディングに表れてしまうん じゃないでしょうか?
ほとんどの人は歴史を有名人の物語でしか知りません。
だから自分の過去生も有名人に関わってる と想像します。
先生のリーディングはそれを読み取ってるだけではないでしょか?
今までの過去生で、三国志や戦国時代の武将、ギリシャの哲人、
イエスに会った人々やエッセネ派の人々、 釈迦の弟子達、
平安貴族や各国の王侯貴族、芸術文化の達人などが90%以上を占めていますが、
これら歴史上のほんの一握りの特殊な人生ばかり出て来るのはおかしいです。
確率的には何万人に一人以下のはずです。
ほとんどの過去生は農民などの一般庶民であるはずです。」

啓史「何がいいたいんだ。
ワシのリーディングがうそを言ってるとでもいいたいのか。
今までリーディングが外れたことが一度でもあったか。」

この日以来啓史とたがるの対立は深刻になっていった。
ある日たがるは啓史の下を去ると言い出した。
たがるは最後に自分の過去生を啓史のリーディングで見てもらい、
それでやめるか否かの決断を することにした。
後日、たがるは啓史の相談者という形で啓史の前に座り、リーディングを受けた。
啓史はトランス 状態に入りしゃべり始めた。

啓史「我々はここにある実体に対し、アカシックレコードからリーディングを行う。 質問してよい。」

たがる「私の過去生を簡単にまとめ説明してください。」

啓史「よろしい。この実体は過去1000回近くもこの地上で人生を送っている。
時代的に農業、建設、医療に携わっている。」

たがる「私が歴史上の有名人だったことはありますか。」

啓史「ない。全て庶民の人生を送っている。
しかしここ数十回の人生では成功を修め、 実力で高い地位に到達している。」

たがる「どうして今までのリーディングで有名人の過去生ばかり出て来るのですか?
最近の例では大河ドラマの主要人物が揃ってしまいました。インチキ臭く思えますが。」 

啓史「その理由はいくつかある。
相談者の過去生が全て有名人であった訳ではない。
過去生のうち、名声を為した人生は本人の潜在意識に深く残っているのだ。
だからこれらの過去生のみを教えているのだ。
また過去に名声を為した人は無意識的に前世を確認したがる傾向がある。
自然とそういう人がここに集まって来るのだ。
大河ドラマにしてもこの時代に活躍した魂はTVを見て過去の記憶を刺激され
過去生を確認したく なったのである。
有名人の生まれ変わりの魂がここに集まる理由は他にもある。
宇宙は今生まれ変わりが存在することをアピールしようとしている。
宇宙の働きによりドラマチックな過去生を持つ魂が呼び集められているのだ。」

たがる「私は実は、リーディングが間違っている証拠を見つけました。
武田信玄の過去生が3人のリーディングに出てきました。
同じ魂が3人に生まれ変わるなん てありえません。」

啓史「実を言うと武田信玄のような高度に発達した魂は幾つも複製されて転生してるのだ。
逆にあまりに堕落した魂は消されているのだ。
よいかこれは未だ宇宙が公開していない真理 なのだ。
宇宙はこの実体に世界で初めて教えることを許可している。
宇宙はこの実体を世界で一番信頼 しているからであるが。
この真理は耐え難いものなので誰にも言ってはならない。」

たがる「わかりました。最後に私に対するアドバイスがありますか。」

啓史「この実体のように過去生の回数の多い魂は世界でも数十人くらいしかいない。
高度に経験を積んだ魂である。
この実体はこの人生で輪廻転生が存在することを科学的に 証明する使命があるのだ。
この偉業は江戸川啓史とこの実体をおいて他に達成できる者はいない。
世界を変えるのはこ の二人以外にいないのだ。
それを達成すればこの実体はもう生まれる必要がなくなるのだ。」

たがる「もう転生をしなくてよいのですか?」

啓史「そうだ。もうこの実体はそこまで発達している。
しかしこの人生で次の問題を克服しなくてはならない。それは素直さを身につけることだ。
啓史に素直に弟子として仕えることだ。そして啓史のリーディングを世界に知らしめるのだ。
もしここでこの実体が啓史の下を去ったらこの実体はもう一回生まれてきて同じ試練を受ける であろう。
汝、使命を全うせよ。使命に従う時、汝は1000回の人生経験が花開き、
汝が希なる天才である 事に気づくであろう。」

たがる「わかりました。これで終わりにします。」

前世リーディングの後、たがるの気持ちはすっかり晴れていた。
たがるは目覚めた啓史にさわやかな笑顔で話し掛けた。
「前世リーディングの内容はすばらしいものでした。私に関しては思っていた通りの内容でした。
先生の前世リーディングが間違いないことを確認出来ました。
今後も弟子として使ってください。」
たがるは鼻歌まじりに自分の部屋に戻っていった。
他の相談者が帰る時と同じように満足しているようだった。
おわり

注・・潜在意識、集合意識は「嘘も方便」「物は言いよう」を自由に駆使して導いているのである。
   賢明なあなたは気づいてるはずです。真に受ける価値などないことを。
   内容の真偽にこだわってはいけない。いい事だけを都合よく信じて前向きになればそれでよいのである。

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